ボーカリストがリハスタでイヤモニを使うには
このノートは以下のシナリオを中心に書いています。
バンドのボーカリストが、リハーサル スタジオで、イヤモニを使うための操作
最終的にはライブハウスでイヤモニを使う前提
バンドのパートは、ギター、ベース、ドラム、鍵盤を想定し、普段のスタジオ リハはこなせるメンバーたちと一緒である
イヤモニのためのワイヤレス システムは Xvive XV-U4 を想定し、イヤフォンは遮音性のあるものを用意していること
なお、先に拙著「ステージでのイヤモニのススメ」を読んでいただくとイヤモニの位置づけや考え方が分かりやすいかもしれません。
先におおまかに概要を書いておきます。
スタジオで鳴らす楽器はすべてミキサーに入力します。ギター アンプやドラムの前にマイクを立て、ベースは DI を使ってもいいでしょう。
AUX 出力端子にイヤモニのトランスミッターをつなぎ、レシーバーにイヤフォンをつなぎ、音を聞ける状態にします
スタジオのスピーカーから出す楽器と出さない楽器をはっきりと決め、出さない楽器のミキサーのフェーダーはゼロにします。ボーカルや鍵盤など、スピーカーから出す楽器は、普段どおりに出してください。
ボーカリストは Pre センドにした AUX Send つまみを使って、イヤモニ用のざっくりミックスを作ります。
何度かバンドで演奏しながらバランスを整えてれば完了です。うまくバランスが取れない時は、足し算ではなく引き算で周りを減らしていきましょう。
ライブハウスでの当日リハでは、普段のスタジオと聞こえ方は違うと思うけど、焦らずに必要なパート、不要なパートを見極めて PA さんにお願いしよう。
ミキサー操作が得意な方は、だいたいこれだけで「なるほど!完全に理解した!」となるでしょうし、以降を読む必要はありません。
楽器の音をミキサーに集めよう
おそらくここが話のハイライトです。自分だけで頑張ろうとせず、メンバー一丸となって取り組む方がよいです。あなたが楽器陣であれば、ボーカリストが最大のパフォーマンスを出すために必要なのだ!と信じて手伝ってあげてください。
エレキ ギター、ベース
一番簡単なのは、キャビの前にマイクを立てて、そのマイクをミキサーに突っ込むだけです。ライブハウスでもおなじみですね。レコーディングではないので、そこまで位置にナーバスにならなくていいです。なんとなくスピーカーにベタッと向いていれば。
マイクですが、よく分からなければボーカル用マイク (SM58 等) で構いません。
ドラム
真面目に集音するのは大変ですが、雑にやるならば、ドラマーの右横と左横くらいに 1 本ずつ適当に立ててなんとなく集音するのでも十分です。マイクが上を向きすぎるとシンバルが大きくなるので、両側からスネアあたりに向ける感じで。
どうせ狭いリハスタであれば、どれだけ遮音してもドラムは消しきれず、身体にも響いてきます(特にバスドラ)。なんとなく拾えれば十分、という補助的なイメージで気楽にやりましょう。
ボーカル、鍵盤、アコースティック ギター
これはたいていミキサーに繋いで音を出しますよね。そうであればそれ以上特別な操作は不要です。普段どおりにつないでください。
ミキサーの設定
ワイヤレス イヤモニの接続
まず、トランスミッターをミキサーの AUX 出力につなぎます。AUX 1 を使う場合、それに相当する出力端子を探します。たいていは、スタジオのコロガシにつながっていると思うので、いったんそれを外し(※)、そこにトランスミッターを接続します。たいてい、フォーン端子か XLR 端子ですので、変換端子を使ってうまくつないでください。分からなければスタジオの人に相談するといいでしょう。
イヤモニのレシーバーと共に電源を入れ、イヤフォンをつないで聞ける状態にしておきます。危ないのでレシーバー側の音量は下げたままにしておきましょう。
ゲイン、フェーダーの操作
ボーカル、鍵盤など、普段のリハでもミキサーにつないでスピーカーから出しているものは、普段どおりにゲイン調整し、適正な音量になるようフェーダーを上げます。
普段はミキサーに入れない楽器たち(ギター、ベース、ドラム)のチャンネルですが、これらのフェーダーは必ず下げきって音が出ないようにしてください。ただし、ゲイン調整は必要ですので、その楽器のうるさい演奏時に赤いランプがつく手前くらいになるように目視でいいので事前に調整してください。
AUX Send レベルの調整
トランスミッターを AUX 1 につないだのであれば、各チャンネルの AUX 1 のつまみは自分のイヤモニ専用になります。部屋の出音にはいっさい影響を与えません。
まずはじめに、全チャンネルの AUX 1 を左に絞りきって音が出ないようにします。
その上で、自分のボーカル チャンネルの AUX 1 を中央まで回します。その後、マイクに向かって声を出しながら、イヤモニ レシーバーの音量を徐々に上げます。イヤフォンから声が聞こえてくれば正常です。適量ちょい小さめになるよう調整してください。
その後、各楽器に個別に音を出してもらい、少しずつ各パートの AUX 1 のつまみを上げていきます。迷ったら小さめでいいです。これをパートの数だけ繰り返します。これでざっくりとしたイヤモニ用ミックスの設定は終わりです。
意外と簡単なものです。
バランスの調整
一発でイヤモニ用バランスが決まることは稀です。バンドメンバーに演奏してもらいながら調整をしてください。
まず自分の声が満足に聞こえることを優先します。その上で音程をキープするために聞きたい楽器を少し大きめに返す、どうしてもリズムに乗れなければリズム隊を増やす、そんなイメージで合わせるのが一般的です。(諸説あります)
逆に、歌が聞こえにくい、という時は、周りの音が大きすぎることがほとんどです。いったん極端に自分以外を下げてた上で必要なものを少しずつ戻しましょう。
その上でボーカルが小さい、ということであれば、必要に応じてレシーバーで全体的に音量を上げてください。たいていはこれでうまくいきます。
狭い部屋でのリハの場合、ドラムの送りをゼロにしてもまだうるさい場合があります。その場合はイヤフォンの遮音が足りていないので、より遮音性の高いイヤフォンやイヤーピースの導入を考えてください。Comply がオススメです。
確実に遮音して必要なものだけを必要最小限の音量で聞く。この指針だけは必ず守ってください。失われた聴力は戻りません。
ハコでの当日リハのバランス調整
スタジオ リハでのイヤモニ利用はもう慣れましたか?それはよかったです!
当日は、普段のリハスタとは全然環境が異なります。普段はうるさいドラマーやMarshall の直撃も、ステージでは少し小さいかもしれません。
とはいえバランス取りの基本は変わりません。必要なものを必要なだけ返してもらえばいいのです。たいてい PA さんが、よかれと思ってラフ ミックスをイヤモニに渡してくれると思うので、リハ中にそれに対して依頼をしましょう。
手早くキメるコツは、ボーカルをあげてください、を絶対に言わないこと。ボーカルが聞こえなければ自分のレシーバーの音量を上げて対応します。その時に必要以上にうるさいパートがあればさげてもらう。これを徹底してください。
リハの時から自分で AUX 送りを真面目に調整していれば、PA さんとの会話もスムーズにいくと思います。
最後に
普段のスタジオ リハでは、自分のマイクのつながったチャンネル分しか触らない、というボーカリストが多いと思います。ただ、操作や仕組みを覚えてしまえば大したことなかった、という声も多くのボーカリストから聞きます。
まずは苦手意識を克服し、イヤモニを使うんだ!というモチベーションで必要な部分から挑戦しましょう。
今回の話くらいであれば、少し操作が得意な人ならなんなく乗り越えられると思います。どうしても自信がなければ、バンド内で詳しそうな人、気軽に相談できるお友だちなどに手伝ってもらってもいいでしょう。
よきバンド ライフを!
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