樹の下になつの鼓動があるごとく天牛虫のしろき星の斑/祐德美惠子
『塔 』 2017年9月号〈作品2〉江戸雪選
木漏れ日の一粒一粒は、ピンホールカメラと同じ原理で映し出される太陽の形だ。樹下の地表に無数の小さな太陽が揺れているさまを「なつの鼓動」と詩的に表したことで、夏特有の強い生命感が際立っている。
白斑のある天牛虫として、ゴマダラカミキリを思い浮かべた。その名から胡麻模様と思ってきた斑は「星の斑」と呼ぶこの歌により、私の中で瞬く間に星へと変わった。
大きな樹と小さな虫、昼の木漏れ日と夜に光る星、という二つの対比が鮮やかに印象に残る。これから天牛虫を見るたびに、きっとこの歌を思い出すだろう。
樹の下になつの鼓動があるごとく天牛虫のしろき星の斑/祐德美惠子
※『塔』2017年11月号に一首評として掲載