塔 2017年1月号掲載歌/川田果弧

声あげて素足に浅瀬をわたりゆく子らの腓にひかりの鱗
積雲の天辺きらり光りをり乗り越したれど顔には出さず
曽祖父は名をニヘイと言ふ うはごとに西瓜欲りつつ逝きにしと聞く
眼鏡にぶつかり来たる青金蚉 日なかの月はうすく削がれて
登戸駅ゆ乗りしタクシーの助手席に多摩川梨の積まれてをりぬ
恋人に梨買ひにきとふ運転手の形よき眉ミラーに映る
ひと枝に咲き残りゐる百日紅あなたの声を憶えてゐます

(若葉集/江戸雪選)