雀らを追ひちらし立つひよどりの顔つきはどこか誰かに似てゐる/清水房雄

 餌を独占するために低く旋回して雀たちを追い払うひよどり。着地して胸を張る姿には「立つ」という言葉がしっくりくる。
 「誰かに」としているが、詠み人の脳裏には特定の人物の顔が浮かんでいるに違いない。下の句の二度の字余りが、口をついて出かかったその人の名前をのみこんだかと思わせて、歯切れの悪さがかえって微笑ましい。
 ともかくも、ひよどりに似ているというのなら憎からず思っている相手だろう。素直ではないけれど、たしかな愛情が感じられる一首。

雀らを追ひちらし立つひよどりの顔つきはどこか誰かに似てゐる/清水房雄