塔 2017年2月号掲載歌/川田果弧
自転車に通学してゆく少女らのスカートの襞交互に尖る
ハンドルの無き蛇口立つ裏庭にかたばみの花咲きて静もる
秋晴れのプールサイドに軽鴨は嘴ふるはせて首をしまへり
おもむろに吹かるる Over the Rainbow 虹の手前に二度つまづきぬ
荻の穂の揺るる彼方にかがよへり今し吹かるるトランペットが
荻原はクリーム色の陽に染みぬとんび平たき螺旋を描く
死のうよと誰彼にいふ酔ひどれの袖口に貝の釦が光る
満月をズームで写しゐるきみの影踏みしめて一歩近づく
(若葉集/永田淳選)※新樹集