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S&P500の本質的な意味を知るべし

S&P500の本質的な意味を知るべし

Q:S&P500を買い続けることが大切なことが頭では理解できるのですが、大きく下げたときのことを考えると購入を躊躇してしまいます。どうすればいいでしょうか。

A:米国株式市場を時々襲う大きな下げにどう立ち向かうか、という質問。質問者の方が「S&P500を買い続けることが大切だ」と目覚めていただいたことは大変立派!忘れたころにやってきて、それまでの儲けを一瞬で吹き飛ばす嵐が怖くて、米株投資に踏み切れないということなので、背中を押してあげようと思う。

皆さんは2000年のITバブルの崩壊や、2008年のサブプライムショックなどが印象に残っているかもしれない。いずれも直近のピークから50%前後も暴落し、世界経済に大きな影響を及ぼした。

それでは、同様の大きなインパクトが生じた暴落(ピークから30%以上の下落)がこれまでに何回あったのかご存じだろうか。正解は左表の7回。前述のITバブル崩壊の前は1987年のブラックマンデーだが、この辺りまでは実体験されている方もいるかもしれない。しかし、その前となると1972~74年のオイルショックで、半ば歴史上の出来事の世界だろうか。

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市場は暴落を経てどう変わったのだろうか。次のチャートは1950年以降のS&P500指数の動きである。結局のところ、暴落を経験してもしっかりと上昇トレンドに復帰するのがS&P500指数なのである。

S&P500指数には大波を被ってもへこたれない強さがある。それはなぜか。ズバリ、この指数が常に優れた米国企業の集合体となっているからである。S&P500指数構成銘柄は、もちろん時価総額が一定以上(ざっと1兆円以上のイメージ)ある企業ということが前提になるが、それだけではなく浮動株比率が50%以上あること、直近四半期および直近連続4四半期が黒字で財務が健全であること、上場後1年以上経過していることなど、いくつかの厳しい基準をクリアすることが求められる。

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日本市場の場合、時価総額1兆円以上となると150社前後ある。日本人の感覚だと、上記条件を
満たして一度選ばれた企業は、よほどのことがない限り指数から外れることはないと思うかもしれない。日経平均株価は東証一部上場約2000銘柄から225銘柄が選ばれているが、1991年までは当該企業が倒産や合併されて消滅した場合のみ銘柄の補充が行われていた。その後は著しく流動性を欠く銘柄を外すという運用がスタートしているが、1999年までに10社ほどが入れ替わっただけであった。2000年には産業構造の実態に近づけるために30銘柄の入替えが行われたものの、除外銘柄の多くは低位株、採用銘柄の多くが値がさ株という構図だった。2001年以降今年までに入替えとなった銘柄は約90あり、平均すれば1年あたり4.7社(225社中2.1%)となるが、実際には企業の合併統合などを理由にするものが多く、裁量的に入れ替えられたのは、1年あたり1.5社(225社中0.65%)にとどまっている。

対してS&P500指数の場合、2002~18年の17年間で、1年あたり平均23社(500社中4.6%)が入替え対象となっているのだ。もちろん日本同様M&Aや部門売却などの結果、入替え対象となるケースが6割強と最も多い。倒産や上場廃止により指数から外れる銘柄も4%ある。重要なのは基準に合致しなくなったことで指数から外れる銘柄が3割強ある点だ。これが何を意味するのか、お分かりだろうか。それは「強いものだけが生き残っていく仕組みだ」ということだ。市場が抱える問題は排除され常に自浄作用が働いている、とも言える。S&P500指数が現在の形で算出されるようになった1957年時点の500社のうち、現在も残っているのは14%以下なのである。

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さて、S&P500指数の構成銘柄となる基準について、もうひとつ重要なポイントがあった。「実質上の本社機能が米国内にあること」だ。つまり、S&P500指数は資本主義の観点で真に強いアメリカを抽出したものだとは言えないだろうか。日本人は市場の変動を循環論で捉えがちであるが、S&P500指数の本質的な意味を理解すれば、米国の上昇トレンドに不安を感じる必要はなくなるのではないだろうか。


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