帰る家がない

人生で7回引っ越しをした。
17歳まで過ごした団地。
幹線道路沿いにあり、二軒隣がマクドナルドとゲオだったシャワーのない家
学校を卒業するまでの半年を過ごしたマンション。
海辺の一軒家
初めて一人暮らしをした社宅
結婚して過ごしたマンション
そして今の家

団地は元々新興住宅地だったので、風景も馴染みの店も年月とともにほぼ全て別の店に変わり、海辺の一軒家にあった私の部屋はゴミ置き場になり、社宅には別の誰かが住んでいて、マンションは名前が変わっていた。

どこの家も同じように不満と楽しみがあった。
特にマクドナルドとゲオの近くにあった家は最高だった。晩御飯まで心ゆくまで古本を立ち読みして、晩御飯を食べた後またゲオに戻った。

いつもふとした瞬間にどうして私はここにいるのか分からなくなってしまう。別にどの土地も行きたくて行った土地ではなかった。心細くてしょうがなく今の家は恐らく終の棲家となる予定だがいつまでも私の家とは思えない。そして実際、私の家ではない。

夢でみる私の家は色んな家のキメラで時によって間取りも変わる。夢でしか行けないショッピングセンターがある。

わたしはいつまでも帰る家がない。
懐かしく思い出すふるさともない。
あそこに帰りたいと願う家もない。

無いものに対してどういう感情を抱けばいいのか分からない。

夕日を見ながら大量の買い物袋を下げた帰り道、ふと途方に暮れる時がある。

どうしてわたしはここにいるのだろうか。全く縁もゆかりもない土地なのに。

本当にいつまでもここにいるのだろうか。
10年経っても仮住まいの気持ちのままです。

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