マガジンのカバー画像

お気に入り記事まとめ

16
迷ったらまずはここから
運営しているクリエイター

#恋愛

女を振るにもルールってものがあるだろ、バカ

*この記事は、WEB天狼院書店で連載していたブログ「川代ノート」の再掲です。 *この記事はフィクションです。 「好き」の残骸が、まだあちらこちらに散らばっていた。とても寒い冬の夜だった。マンションの廊下から漏れる光で、薄ぼんやりと部屋の中が照らされているのが嫌で、ドアを閉める。蛍光灯の光の線が細くなって、そして消えていった。そのまま背中を玄関扉に預ける。はあ、とため息をついてしばらくもたれかかったまま、真っ暗な部屋の中でじっとしていた。 なんでだめになっちゃったんだろう、

トムヤムクンヌードルに負けた女

「ちょっと待ってよ。じゃあ私、トムヤムクンヌードルに負けたってこと?」 マサルの彼女は、怒っていた。ものすごく怒っていた。そして泣いていた。怒りのあまり泣く人間を見たのは、生まれて初めてのことだった。小型犬が威嚇しているときみたいなシワが顔の中心によっていた。けれど、その顔を見てもどうすることもできなかった。トムヤムクンヌードルと箸を持ったまま、マサルは固まっていた。頭の中ではトムヤムクンヌードルと彼女がシーソーの上に乗ってゆらゆらしていた。なんて答えればいいんだろうか、俺