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アナログ回帰

こちらの記事を読みました。

早くも生成AIの反動? 漫画家・ひな姫が語る、アナログ回帰の理由「心の底から感動できるのは手描きの絵」 Real Sound 23/11/28

デジタル作画していた漫画家さんが、水彩画の楽しさに目覚めてアナログ回帰したという記事。

生成AIの普及により、人の手によらない創作物が作れるようになりました。それが今までの創作環境に、どう影響を及ぼすかというのは作り手として非常に気になるところです。

その時に思うのが、手書きの価値がどれぐらい認められるのだろうかということ。なので上記の記事が目に止まったのです。

例えば音楽の世界で、アナログレコードがいまだ生き残っているというのも、これに関連する事象だと思うのです。むしろCDの方がなくなった。多くの人はそこまで細かい音質にこだわっておらず、曲が聞ければよくてストリーミングでもOK。ただ中には強いこだわりを持つ人がいて、そういう人は大きなジャケットとかアナログの聞き心地とか、そういうものに惹かれて買い集める。デジタルではない手触り感が、価値になる場面もあるのです。

それこそデジタル作画にしてもそうで。

記事の中にも書かれていますが、明らかに仕上げに関してはデジタルの方が早い。そしてわざわざ手でトーンを貼ることに市場価値は見いだされていない。でも線画の部分はどうか。

デジタル作画が導入された当初は、それによる上手い絵というのは、とても綺麗な絵のことでした。つけペンで線をきれいに引くというのはけっこう難しく、修行が必要。そこがデジタルであれば、簡単にできた。

ところが、そのつるっとしたぶれのない描線よりも、ブレのあるラフな絵の方がいいという描き手がいる。お絵描きソフトではカスタムブラシを作ることができますが、わざわざ手描きっぽいブレが出る物を作って使う人がいたりします。デジタル作画なのに、わざわざアナログの方に寄せて描くということが起きているのです。

そう考えるとどちらか100%が正解ということではなくて、 その間のところに、それぞれの人の好みで着地点が生まれるのだろうなと。

するとそれをビジネスとして見た時に、受け取るお客さんの着地点がどこらへんなのか。そこが重要。ビジネスとしては需要が大きいところに向かって収束していくはずだからです。そしてお客さんの集まり具合。ぎゅっと一点に集まっているのか、ふわりと広がりを持っているのか。

書き手にとって最悪の状態、全部AIに取って代わられクリエイターがいらない状態を考えてみます。ただ、それでも発注者がいるはずなのです。そしてその場合の生成AIで作品を作ろうとしている人は、多分ビジネス100%。「売れるものを作る」が動機です。そうすると需要の濃いところに殺到し、すごいレッドオーシャンになる。

人間のクリエイターには「描きたいもの」というパラメーターがあり、需要にどれだけ寄せるかというのも個性のうちです。需要の薄いところにも、魂に導かれて行ってしまいます。そこでお客さんの方に広がりがあれば、需要が薄いなりに成り立つ場所が増えます。

そしてそこで、手書きであることに価値を見出す人が多ければ、さらによい、というわけです。

AI自体は便利なので、何だかんだで普及していくんでしょうが、そういうところで手書きの書き手の活動が成り立つ余地が変わってくるのかなと思うのです。そんな場所がなるべく広がってるといいな。

(ブログ『かってに応援団』より転載)

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