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心の奥深く?(河合隼雄「昔話の深層」)

占い好きが読んだ本の書評。シリーズで書いてみますね。

この本をざっくりいうと、「読むと心の深層がわかる」ではなくて、「ユング心理学」における、アニマ・アニムスとか、河合先生が好きな「影(シャドー)」や「悪」について入口的な内容が書かれている。つまり、「心の奥深く」にある「共通した意識」、集合的無意識について書かれた本。

よくもまあ、文庫化したなと思う。入門的とは思うけど、ユング心理学に親しみがないと難しい。河合先生の本の中では重厚感がある方のやつ。

初出は絵本系の雑誌。ユング研究所から帰ってきてしばらくしてからだけど、フォンフランツという、河合先生がユング研究所でのお師匠さん的存在の講義録やフランツさんの本がベースになってる。河合先生はよく、「自分は一冊読めばそれについての本がかけます」と言っていたと、伝聞なので事実かどうか知らないけれど話していたそうで、かの有名な「ユング心理学入門」も種本が存在してる。「書くのが早いから隼雄です」という冗談もあるくらい。それはともかく。

一つ注意すべきは、これ、実は「元型心理学」なので「ユング心理学」というタイトルに語弊がある。

意識される部分と意識されない無意識があるけれど、その無意識には人類に共通するものがあるかもしれない、それをユングは夢から辿ったけど、夢やそれに近い変性意識や直感をキーに作ったかもしれない昔話から、それらを辿ろうという話です。

後年、河合先生は日本の昔話からそれを読み解くのですが、それはまた別の話。ここでは日本の昔話に出てくる「鬼」とか「動物」についての当時の考えもあるので、それに触れるのも楽しい。

訳のわからない物語も多いグリム童話を鮮やかに描き出した労作とも言えるので、あのどろっとした世界観に浸るのもいいかな。

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