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物神


「神は細部に宿ると言うが、大きいところでは見えないのかもしれませんねえ」
「やはり小さいところの方が見えやすいのでしょ」
「さらに小さい物なら、さらによく見えるかもしれんが」
「僕は大きな物の中にこそ神がいると思っていました。この大きさは神でないとなせないようなスケールのどでかいものですから」
「だから大きすぎて、神がどこにいるのかが見えない」
「神なので、目では見えないし」
「しかし、細部に宿るというのはいいねえ。神の片鱗が出やすいのだろう」
「細かいところまで手を抜かず、きっちりしているとか」
「さあ、それは知らんが、細部を見る方が分かりやすい。神が宿っているかどうかがね」
「やはり細かい箇所を見れば分かってしまう」
「まあ、丁寧な、という程度かな」
「こんな所、誰も見ていないだろうと思い、手を抜くことがあります。適当にやっていました」
「目利きは、そこを見る。そこばかり見る。重箱の隅ばかりな」
「全体の大きな所も見るでしょ」
「隅っこを見た方が分かりやすい」
「じゃ、隅っこや、小さな所にいっぱい神の宿を作ります」
「神の宿?」
「はい」
「神社か」
「いえいえ」
「その隅っこ。細部。小さな所、さらにもっと細かいところ、もう目には見えないほどの小ささで、小さいことも分からないほどの小ささ。極小で、それ以上小さな物はないほどの箇所」
「凄く小さい世界ですねえ」
「その最小単位の箇所。神が宿るというよりも、そこが神そのものかもしれないねえ」
「そんな小さな箇所、もう物ではないのでは」
「だから全部神だよ」
「物神様ですね」
「なんだそれは」
「勝手にそう感じました」
「物神か。使えそうで使えん」
「あ、はい」
 
   了

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