前評判
「予想とは違うことがある」
「ありますねえ。予想ですから」
「前評判もそうだ。噂なので、そんなものかもしれないが、かなり違っておる。現実はな」
「予想も予測もそうですか」
「予想ではなく、それを見た人の評判も現実とは違っていたりする」
「まあ、当てにならないと」
「目安にはなるが、それが大きく外れると信用ならん。当てにはできんが、おおよそのことは分かる程度」
「それでよろしいのでは」
「現実に接してみると予想も評判も関係しなかったりする」
「全く別のものだと」
「そこまでかけ離れてはおらんが」
「何でしょうねえ」
「本当のことを隠しているんだ。言わないだけかもしれない。または言いたくない。これは黙っていたいのだろうか」
「じゃ、あえて見当外れな事を」
「さあ、それはどうかな」
「何でしょう」
「言えない事象なのだろう」
「公言しにくいような」
「したいのだが、したくないような」
「何でしょう」
「君も考えなさい」
「いえ、何が問題になっているのか知りませんので」
「しかし良いものを見させてもらった。予想や噂では大したことはない低レベルなものとなっていたので、わしもその心づもりでいた。だから期待などしていなかった。そして蓋を開けると、その通りだった」
「じゃ、予想通り、予定通りですね」
「ところが違うのだ。かなり高レベルなのだ。低レベルのつもりでいたので高レベルに変わったときの驚き。これは値打ちがあった」
「え、何でしょう。何が起こったのですか」
「これを隠していたのか、これが言えなかったことなのか。言いたくても言えなかったことはこれかと分かった。これは言えなくて当然だと。言ってしまえばおしまい」
「状況がよく分かりませんが」
「低く見積もることで油断させていたんだ」
「では、予測、役に立ちましたねえ。その予測が効果的に効いたような感じでしょ」
「効いた」
「でも、それは結果的には良いものだったのでしょ。凄いものだったのでしょ」
「高レベルを越えるほどのな」
「では、そういう評価が既にあるはずでしょ」
「ない。本当の評価は言えないのだよ」
「世の中にはそういうこともあるのでしょうねえ」
「まあ、ありきたりなことだがな」
「あ、はい」
了
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