何もしない夏


 夏場厳しいので、何もしないで過ごそうかと竹田は考えたが、これは考えるだけ無駄。やることはそれなりにあるし、日々やらないといけないこともある。
 それを少し減らし、涼しくなるまで放置してもいい。それでも一割程度減らせるだけで、これでは何もしないで過ごすというのにはほど遠い。
 ご飯も食べないといけないし寝ないといけない。これは略せないだろう。暑いので睡眠は秋から、とかにはいかない。食事もそうだ。
 しかし暑いので食欲が減り、食べる量が減ったのか、食べるのが早い。それで時間的余裕が生まれるわけではない。ちょっと休憩する時間が増えるだけ。確かにその休憩、何もしていないのに近いが。
 また竹田は健康のため、散歩に出る。しかし、この暑さでは健康に悪い。本末転倒。逆効果だ。それならしない方がいい。プラスマイナスゼロになるかどうかは分からないが、散歩の時間、昼寝でもしておいた方がいいだろう。
 それで略せるところを見つけ出し、余計な用事を省くと、二割とか三割ほど何もしない状態に近づく。
 この二割ほどの日課外しは結構効く。別にやらなくてもいいことをやっていたので、見直す良い機会になる。
 しかし入院患者のようにずっとベッドの上というのも苦しい。それほど寝られるものではないので、目だけは冴えているもののやることがない。まあ、適当にテレビとかを見ておれば良いのだが。
 気に入ったものを見ているときは良いが、そうではないものをずっと見ているのは苦痛。それでテレビには目は行っているし耳からも入ってくるが、別のことを考えたり、思ったりする。
 何かをしながら、別のことを思う。これは悪くはない。物思いだけにふける状態など希で、軽く思い出に浸ったり、先のことを思い巡らす程度。そんなに長い時間ではない。
 何もしないで過ごすというのも、結構難しいものだと竹田は考えた。それなら何かをしている方が簡単で楽だと。
 暑い思いをしながら終える一日。布団の上で寝転がったときの気持ちよさがある。暑いことは暑いが座っているよりもまし。それに電気を消すので。
 ここの気持ちよさは、少し暑苦しいことをした日の方が効果がある。やっと寝れると。もう本当に何もしなくてもいい時間に来たと。
 しかし、寝ることも何かをしていることには変わりはない。ただ寝てしまうと、それも忘れるが。
 
   了

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