高校サッカー 後編

 
ついに全国高校サッカー選手権大会初戦の日がやってきた。

ところが、この日の予報は雪。朝からかなりの雪が降っていた。
試合が始まるときには雪は積もり、グラウンドは真っ白。そのため、ボールも転がらない。

僕たち麻布大学付属高校のサッカーは、ボールを大事につなぐ、見ている人もやっている人も楽しめるようなサッカーだった。

それがピッチに積もった雪のせいで、自分達の力を少しも出せないまま、刻々と時間だけが過ぎていく。

もちろん条件は相手チームも同じ。言い訳でしかないといわれれば、それまでなのかもしれない。
 

ただ、今思い返してみても、あの試合はあんまりじゃないかと思う。

ずっとこの日のために毎日厳しい練習を耐えてきたのに、これで終わりだなんて……。
 

僕たち2年生はまだいい。自分たちの頑張り次第では、また来年もチャンスがあるのだから……。
ただ先輩達にとっては、これで最後の試合になるかもしれない。
そんな悲しいことは絶対にあってはいけない。
そう思いながら、僕はベンチから試合を見ていた。
 
0対1の試合展開の中、僕は途中から試合に出た。

なぜかピッチに立ったときから少し泣きそうだった。
雪がどんどん強くなり、数十メートル先が全く見えない。
この状況をどうすることもできない無力さに、自分のことが嫌になった。

それどころか、僕は致命的なミスを犯してしまう。自陣ペナルティーエリアの近くでファールを犯してしまい、そのFKで失点してしまったのだ。

そしてこのまま、僕は何もできないまま、試合終了の笛を聞くことになった。

 
1回戦敗退……。

 
涙が止まらなかった。

 
大好きな先輩たちを見て、さらに涙が溢れ出した。

 
この日の涙を、僕は絶対に忘れない。

 
先輩たちの悔しさを背負って来年も必ずこの舞台に立つ。
 
そうサッカーノートに書いたことをよく覚えている。

 
それから月日が経ち、新チームがスタートした。
新チームが始まる時に新しい背番号の発表がある。
麻布大学付属高校のエースナンバーは10番。先輩たちの代ではフォーメーションの3-5-2でいうトップ下をやっていた憧れの先輩がつけていた。そして新チームのトップ下は僕。期待で胸がたかぶっていた。

 
しかしながら僕の期待とは裏腹に、10番をつけたのは太田宏介だった。
僕は8番。
今思えばその時の実力を考えてみれば、誰もが納得だったと思う。
それでも、その時の僕はとてつもなく悔しかった。
このnoteを読んでいる高校サッカー部の友達が見たら、「そうだったの?」と驚くかもしれないが、この日は悔しくて全然眠れなかった。

 
新チームになり、僕たちは周りからの期待を肌で感じるようになった。
それもそのはずだ。僕たちは神奈川県のチャンピオンチームとしてスタートするからだ。

プレッシャーがなかったと言えば嘘になる。
それでも去年のスタメンの中には、僕たち2年生が半分出ていたし、試合に出られないメンバーの中にも、力を持っている選手がたくさんいたから、僕は自分達にすごく期待していた。

それは僕だけじゃなく、みんなも同じ気持ちだったと思う。
 
結果的に見れば宏介や、今はテゲバジャーロ宮崎にいる小野寺達也(栃木SC→V・ファーレン長崎→ギラヴァンツ北九州)がいたのだから、そりゃあ強いわけだよなと思うけど。
 

それだけじゃなく、僕たちには強い絆があったと思う。
今でも年末になるとこの代のサッカー部で集まり、昔話に花を咲かせる。
きっとこの先もずっと関係を切らすことのない大切な仲間なんだと思う。

 
高校の話はかなり長くなってしまったので、次の完結編で最後にしようと思う。