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大学サッカー(中編)

関東1.2年選抜のセレクションに受かった僕は、そのメンバーの一員として韓国遠征に行くことになった。

この遠征で感じたのは、やはり関東1部リーグと2部リーグでは、すごく実力に差があるということだった。
僕を含め、この遠征メンバーの中に、2部リーグでプレーしている選手は、確か3人くらいしかいなかったように思う。
個人としての力の差もそうだが、プロのスカウトの見る目だったり、注目度も違うなと感じた。遠征中には、1部に所属していた明治大学のある選手が、名古屋グランパスからオファーをもらっていると聞いて、やっぱり1部はすごいなと感じた。
それと同時に、やっぱりプロになるためには、1部に行かなければいけない。
このままの自分ではダメだと強く思ったことを覚えている。
ただ、つい半年くらい前までは、プロにはもうなれないんじゃないかと思っていた自分が、関東選抜や新人賞をとったことで、プロになる可能性が全くのゼロではないんじゃないかと思えるようにもなっていた。

そう感じはじめていたとき、大学2年生になった僕にとって、一つの大きな出会いがあった。

今も拓殖大学でメンタルトレーナーをやっている萩原葉子さんとの出会いだった。
最初に見たときの印象は、失礼ながら、どこにでもいそうなおばちゃんだなと思ったけど(萩さん、ごめんなさい)、それまでメンタルトレーニングというものを全くしたことがなかったので、萩さんのトレーニングは僕にとってかなり新鮮だったのだ。

そして、ここでも僕の性格がいい方向に出たように思う。

何でもまずは受け入れる。

そうした性格がいろんなことを吸収して、今の自分があるんだと思う。

周りの選手達の中には、いきなり来たおばちゃんのことを信用できず、受け入れない選手もたくさんいた。でも、僕は萩さんに勧められたトレーニング方法を試してみた。

試合前に集中力を高める方法。
目標を紙に書いて毎日見える場所にその紙を置くこと。

これはプロになった今でも続けていることでもある。

だから、僕の寝室のドアには紙に書いた今年の目標が今も貼られている。

そして、それを朝起きて毎日見てから部屋を出る。
このルーティンが自分をその目標に近づけてくれると信じているからだ。

他にも萩さんに勧められた本を読むことで、この時期から読書が好きになり、いろいろな情報を得られるようになった。
本を読むことで自分の人間としての知識という引き出しが増えていくような気がした。

もう一つ。萩さんとの出会ったおかげで、自分とは性格的に合わない人のことを受け入れる努力をするようにもなった。
この頃、大学のチーム内で、正直に言ってあまり好きではない選手が何人かいた。
一生懸命やらない選手、1部に行くことをあきらめている選手。こういう選手達のことを当時の僕は、萩さんにたくさん愚痴っていたと思う。
一緒に試合をするチームメイトを嫌ってしまう。チームスポーツをやる上で、それは一つもプラスには作用しない。
だから僕は、萩さんのアドバイスもあって、その選手に歩み寄る努力をした。
するとそこから不思議なことに、ポジティブなエネルギーが広がっていくことに気がついた。

苦手に思っていた選手の良いところを探すことで、それが自分にも返ってくる。
練習でコミュニケーションをとることで、その選手から僕にパスが繋がるようになった。

これは今のサッカーにも通ずるものがある。
今はもう、かなりの大人なので、好きな選手とか嫌いな選手とかはもちろんいないけれど、プレースタイルだったり、思っていることが違ったときに、相手はいま何を考えていたんだろうと、まずは歩み寄る努力をするようになった。

これは大学時代に萩さんに出会えたことが大きかったんだと思う。
こうしてメンタル面でも少しずつ成長して行き、2年生の関東リーグが終了。授賞式では関東2部リーグのベストイレブンにまで選ばれた。

しかし、目標であった1部昇格は叶わなかった。

自分には何が足りないのか。

それを探すための3年目になった。