恋人と猫

 いつからか当たり前にただ生きることが出来なくなっていた。僕の今までの人生は何も考えず、辛い事から逃げ、妥協して、ただのうのうと生きてきただけだ。そんな僕が出会った恋人はずっと考えてきた人だった。

 そんな僕だったから、恋人を何度も何度も傷つけた。それでも恋人は僕の手を離さないでいてくれた。でも今は違う。恋人にも限界がきて、恋人の口から離れようと出てくる。関係を、恋人を散々壊してしまった僕のせいだ。

 変わったのは恋人だけではなかった。僕も変わっていた。以前よりも考える事が出来るようになり、一人の人として、以前よりはしっかりしていると自負している。今の僕なら、恋人を幸せにしてあげられる。そう確信しているから、僕は恋人の手を離さない。でも過去の過ちにより恋人には認めてもらえない。依然、恋人を苦しめているのが現状だ。二人のために離さないんだとか言って、恋人の言う通り、自分勝手なのかな。それでも自分勝手でもなんでも僕は恋人と一緒に居たいんだよ。


 今日は仕事を休んだ。一人でいると、心が重たい。心臓の上に物体が乗っかっている様だ。何もする気になれない。自分のために美味しそうなヨーグルトを買ってみたが、美味しいとは思えなかった。一方、二人でいると、とても気持ちが晴れる。一緒に居るだけで楽しいし、その事実が嬉しい。でもなんだが切ない。当たり前に一緒に居るようで、これは当たり前ではないからかな。いつまでもただ続いていくわけではない。そう思うとより今を、恋人を、二人の関係を大事にできる気がする。

 今ベッドに横たわりながら、こんな事を考え、文字に残している。恋人にとってはこんな事、とうの昔に考えていたのだろうなと思った。今日は家で一人の時間が長い。家の猫はやけにくっついてくる。僕の気分が優れないのが分かるのかな。愛おしいね。恋人と猫には全てお見通しらしい。


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