人生を変えた男
12月13日火曜日、Zepp DiverCityにすかんちの40周年記念ツアーファイナルを観に行ってきた。
「すかんち」というのはバンド名で(ご存知の方はすみません)、『ムジカピッコリーノ』で司令官役をやってらっしゃったり、『タモリ倶楽部』などのバラエティにもたまに出られたりしているROLLYさんがリーダー、ほとんどの曲の作詞作曲、ヴォーカルギターをつとめている。
僕は30年弱くらい、小学生の時からすかんち及びROLLYさんのソロを聴き続けているファンだが、コンサートを観たのはこれが2回目である。
1回目も2022年に入ってから、8月に同じくZeppで筋肉少女帯とのツーマンライブを観た。これが初めて生ですかんちを観たタイミングだった。
その日はツーマンということで10曲くらいやっていたのだが、僕は恥ずかしながら1曲目「You You You」から最後の「レターマン」まで全曲泣き通していた。しかも涙がツーッみたいな感じではなく、エグエグ系の号泣である。
すかんちの曲は基本的にノリのいいポップなロックンロールなので、決して泣くような感じではない。なので周りの人に怪しまれないように肩の震えなどを押さえるのに必死だった。
音楽のライブでここまで泣いたのは初めてだった。(劇団四季ライオンキングでは毎回サークルオブライフの出だしで爆泣きしますが…)
自分でも理解不能な涙だったので最初ビックリしたが、今は整理がついている。
すかんちは、僕の音楽の原体験なのだ。ひいては人生の原点なのだ。
小学生のころ観ていた『天才てれびくん』のOPテーマがすかんちの「タイムマシーンでいこう」、EDテーマが「You You You」という曲だった。今調べたら筆者が8歳のころ。
普通に毎日聴いている曲なので大好きだったのだが、ある回で実際にROLLYさん(当時はローリー寺西名義)が登場して歌唱している場面があり、衝撃を受けた。
その頃のROLLYさんはド金髪のロングヘアに真っ赤な衣装、メイクもしていて、子供からするとマクドナルドのドナルドの仲間のように見えた。それまで歌を歌う人といえば、うたのお兄さんお姉さんしか知らなかったわけだから、衝撃も当然である。ちょっとだけ"見てはいけないもの"のような感覚もあった。
思えばあの時のROLLYさんの姿が、いわゆるロック的なものに振れた最初の体験だった。
その後、僕が自発的に音楽を聴くようになるのは11歳の頃のTHE YELLOW MONKEYとの出会いまで待たなければいけないのだが、今振り返るとイエモンにアンテナが立ったのもすかんちの擦りこみがあったからなんだと思う。同じく金髪でロンドンブーツ履いてて、グラムロックを下地に持つポップなバンドだ。
お金のない中学時代には地域の図書館でCDをレンタルしていたのだが、久々に「すかんち」の名前を見て「天てれのやつだ!なちぃ~」と借りたベストアルバム『HISTORIC GRAMMAR』。
当時まだカセットテープの時代だったが、古いカセットデッキで録音したガビガビの音質のこのアルバムがとっても好きだった。
見た目は派手派手、サウンドもゴージャス、だがそこで歌われているのは好きな子にどうしても告白できない、チマチマした男のつぶやきだった。
1曲目「魅惑のYoung Love」の歌詞"どちらか選んでくれ 僕は友達か彼氏か"なんてまるで岡村靖幸さんの世界のようだ。
もしくは現実ではチマチマしているからこそ妄想の世界に羽ばたいてしまった、ダークなおとぎ話のような歌詞もあった。
その時点ですかんちはリアルタイムで活動しているバンドではなかったため、ライブに行く機会はなかったのだ。
もちろん他にも好きな音楽が沢山出来た。すかんちはあまり聴かなくなった。
そのうち自分でもバンドをやりたくなって、音楽を始め、今は一応職業にもなった。
でもそれらすべての始まりが、すかんちからだったんだということをあの日のライブで強烈に思い出させられたのだ。
確実に僕の人生を変えた男が、いま目の前にいるということに感動してしまったが故の爆泣きだった。
別に最近熱心に聞いていたわけじゃないけれど、全曲完璧に歌詞を口ずさめた。そのことにも自分でびっくりした。
さて話は今日のライブに。
8月のライブはそんな感じで変な見方になっちゃったので、今日は普通に楽しむぜ!と意気込んだ。何回かウルッとくる場面はあったが、ガマンした。一度決壊するとまた涙が止まらなくなる気がしたから。
対バンライブの時とは違い、ヒットナンバーにかなりディープな選曲も混ぜた、素晴らしいセットリストだった。そして1年に1回の活動とは思えないほどの鉄壁のアンサンブル。
最近では生で観ることが中々難しいハードロック・グラムロックのコンサートだった。
本編最後の曲、「恋の1,000,000$マン」の前のROLLYさんのMC。
30年前に作ったという小道具の札束を持ってこうおっしゃっていた。
「このお札をコンビニで出したらすぐ捕まります。でも、心の中では本物の札束だと思うことができる。想像の世界は自由なのです」
はい、自分、ここでもうダメでした。
想像の世界を信じ続けて40年バンドを引っ張ってきたROLLYさんの信念がこの言葉に表れている気がして、またエグ号泣してしまいました。
すかんちのメンバーには既に亡くなった方もいたり、事故でダメージを負い、中々ステージに立てなくなった方もいる。キャリアの長いバンドだから、普通にそういうことがある。
それでも想像の世界では一緒に演奏できるんだと、そういうメッセージも込められていると考えるとさらにエグエグエグエグ……
その後も、「僕の追悼コンサートを今度はあなたがZeppでやってください」と発言。これはもう客席にいたミュージシャンは全員エグエグだったのではないでしょうか。もちろん私はエグエグエグエグ……
ROLLYさんは来年還暦とのこと。こんなにカッコいい60歳がいるんだから夢があるってもんだ。(なんと今日も20代の時に仕立てたというスーツを着てらっしゃいました。やば!)
僕はあまり自分が尊敬している人や好きな芸能人には会いたくないタイプなのだが、ROLLYさんには「人生変わりました」といつか伝えたいという気持ちもある。
もしかしたらちょっとおかしな方向に変わったのかもしれないけれど、変えてもらってよかった、と今日のライブを観て思った。
※こないだも今日もやらなかったけど、『天才てれびくん』のOP「タイムマシンでいこうよ」を生で聴いたら膝から崩れ落ちるかもしれない。なのでやってくれなくてよかった……いつか聴きたいです。
そして『天てれ』の主題歌を担当するのが夢です。
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