見出し画像

最高のロック歌手・反町隆史全曲レビューPart1

皆さんは歌手・反町隆史さんを知っているだろうか。
いや、ここはあえて最大限のリスペクトをこめて「反町」と呼ばせていただこう。(矢沢永吉さんのファンが「YAZAWA」と呼ぶのと同じ)

君は反町を知っているか?

僕は知っている。反町のCDを全て持っている。
もちろん『POISON』『Forever』なんかの有名な曲はあるけれど、歌手・反町の魅力はあれだけではない。大学の頃にネタで買った中古の反町のCD。しかしあそこから僕の人生が変わったともいえる。
以前、ROLLYさんが僕の人生を変えてくれたと書いたが、反町隆史もまた、僕の人生を変えてくれた一人だ。
"世間の風潮に流されるな"という価値観をもったのは、反町に出会ってからだ。
自分は決してロック的な人間ではないと思うが、それでも心に"ROCK"の小さな灯がともっているとしたら、それは反町によって点火されたものである。

しかし世間からは、歌手・反町はネタとして扱われることが多い。確かにその無骨な歌い方と「ポイズン!」という脈略のない英単語の挿入は面白い。面白かった。
だが、時代は令和である。日本人はもうそこから抜け出してもいいのではないだろうか。僕は立ち上がりたい。反町隆史の歌手としての魅力を、もう一度世間に知らしめたい。微力ながらその第一歩として、今日から全曲レビューをやっていきたいと思う。

だが残念ながら反町の音源はほとんどサブスクにない。
CDの時代は終わり、サブスクが天下をとっているとか言われているが、筆者としては反町が解禁してないのだから所詮サブスクなんてそこまでの存在である。
これを読んで「なにそれ興味ある」となったあなた、ほとんどの音源がAmazonでは中古品が1円で手に入るらしい。是非聴いてみて欲しい。


ちなみに筆者はiTunesで反町隆史のジャンルを「リアル」と入力している。「リアル」というジャンルに、他のアーティストは、いない。


1st『メッセージ』(1997)

まず言っておきたい。ファーストアルバム『メッセージ』これがまぎれもなく反町隆史最高傑作であり、ROCK史に残る金字塔である。

代表曲の『POISON』こそ入っていないが、すべての曲に溢れんばかりの反町イズムが叩き込まれている。SEX PISTOLSの『勝手にしやがれ』、THE WHOの『My Generation』など、ロックバンドのファーストアルバムには初期衝動にあふれた名盤が多いのは定説であるが、反町隆史『メッセージ』もそこに並べるべき超名盤である。反町初心者、ひいては音楽初心者の方には是非、このアルバムの購入をすすめたい。
それでは1曲ずつ聴いていこう。


1.GETTING MY WAY
激ヤバハードロックギターリフでいきなりリスナーの耳を殴りにくる名曲。すこし風邪気味なのか「Rock'n roll day」という歌詞を「ロックンロールベイ(湾岸)」と歌っているが、その歌に込められた魂はまぎれもなく「本物」である。「永遠」と書いて「とわ」「愛」とかいて「きみ」など、J-POPの世界ではそういった当て字がよくあるものだが、この曲における、「女」と書いて「えもの」と読ませる作詞術は他に類を見ない。

~"薄っぺらい紙の上では生きたくない"~


2.NO PAIN NO GAIN
スラムの路地裏をイメージさせるSEからぶっといベースで幕を開ける名曲。ハードロックなのに耳元で歌われているような変わったバランスだが、「出し惜しみせず欲しいものを取りに行け」とリスナーを煽るような歌詞にはピッタリである。最後のサビ前では珍しいハイトーンボーカルが聴ける。そのせいかなんとなく最後のサビで疲れているような気もするが、これもリアルである。

~"YOU WILL GAIN IN THE END"~


3.Forever
言わずと知れたミュージシャン反町隆史のデビュー曲であり、ドラマ『ビーチボーイズ』のテーマ曲。イントロを聴くだけで強制的に千葉の浜辺をイメージさせる超名曲。世界的バンド・ボンジョビのリッチーサンボラがギターソロとコーラスを担当しているということで、もはやこの曲は洋楽である
歌詞は割とビーチボーイズの内容をイメージさせるもので、竹野内豊さん演じる海都へのラブソングともとれる。

~"これからの道で何があっても 今を忘れないさ"~


4.YES!
全曲がハイライトの『メッセージ』の中でも、突出した名曲。アメリカの泥臭いロック風アレンジに、他では聴けないゴキゲンな反町のヴォーカルが素晴らしい。聴いているこっちが笑顔にさせられてしまう。
最高の聴きどころはサビで、ノリノリになった反町が歌詞にない「ベウェイ」というフェイクを入れてくるところだ。初めて聴いたときは「ベウェイ」ってなんだよ…と困惑させられたが、今思うと「ベウェイ」なしでは『メッセージ』はここまでの評価を得ることはなかったと思う。(筆者の中で)
基本的に音程の正確さやタイム感とかはあまり気にしないタイプのヴォーカルスタイルではあるが、この曲はノリを重視しているためか、よりすごいことになっている。「ちょっとズレてるけどこれでいこう」と決めたディレクター氏の英断であると思う。

~”俺は越えてゆく 俺を越えてゆく”~


5.自分らしく
反町隆史全楽曲の中で最高の名曲。正直この曲のすばらしさだけでも2万字くらいは書けるのだが、少し端折ることにする。
まあ世間的に「反町隆史好きです」といえば「『POISON』っすかw」と半笑いで言われることが多い。昔はいちいちキレていたが、今は僕も大人だ。そんなトーシローは相手にしないことに決めている。とにかく!反町隆史といえば『自分らしく』だから!!
ファンキーなブラスで幕をあけ、東京の危険な夜をイメージさせる硬派なイントロ。そしてAメロが始まるが、なんとウィスパーボイス+早口のため8割がたの歌詞が聞き取れないのだ。初めてビリーアイリッシュを聴いたとき「なんだこれ、『自分らしく』のAメロじゃん」と思ったものだ。
とにかく、正直に生きる自分を否定するまわりの目線に対してキレちらかしている。「売られた喧嘩と裏切る野郎」「都会のpillとナンパなやつら」を糾弾しているこの曲の主人公は、恐らく硬派なヤンキーだと想像できる。
『YES!』同様、『自分らしく』も決して他のミュージシャンでは味わうことのできない絶妙なタイム感のヴォーカルを聴くことができる。
この曲を聴くだけでも『メッセージ』を買う意味があると断言する。

~”直観的に生きたいと思わないか”~


6.最後の言葉
レコードノイズから始まる都会的なバラード。ここまで熱くリスナーを煽り立ててきた反町が、叶わない恋を優しく歌う名曲。
正直初めて聴いたときは童貞だったのでこの曲の魅力を理解できなかったが、愛と別れを知る大人には刺さる楽曲であろう。
ヴォーカルのテンション的には前2曲よりグッと抑え目のため、聴いていて落ち着く。

~”こんなに切ない気持ちで迎える朝を 僕は知らない”~



7.ひとり
続いても名バラード。というか後半4曲は全てバラードだ。これはアナログ盤のA面B面を意識した構成ではなかろうか。是非このアナログ盤ブームの現代にリリースしてもらいたいものだ。
『最後の言葉』は、付き合う前に何度か身体の関係があった女性との別れというストーリーだが、『ひとり』では同棲していた彼女が出ていってしまう。ひとりになって何でもできるはずなのに、なぜか不自由で退屈だ、という思いを切々と歌い上げる。

~”電話が鳴るたびに いつだってお前じゃないかと… ああ”~


8.メッセージ
このアルバム後半のハイライトであり、アルバムタイトルにもなっている大名曲。『Let It Be』や『Don't Look Back In Anger』と並べても遜色ないアンセムである。もはや洋楽だ。
ある別れてしまった女性に書いているようでいて(実際反町本人はそう解説している)、夢の途中であった過去の反町隆史本人に歌っているのでは、とも読み取れる。遠くで俺が見守っているから焦らずに続けるんだ、というメッセージ。おそらくNiziUの『Step and a step』の歌詞はこの曲から着想を得ているのだろう。
6分以上ある曲の最後は、反町隆史の語り掛けでおわる。「おまえは何が欲しい? 愛 自由 安らぎ…」最後の「安らぎ」だけまたもやウィスパーボイスなので「ラシラキ…」に聴こえるが、それでもこのメッセージは今に至っても僕たちの胸を打ってやまない。

~”でも自分を誇りに思うのなら そっと時が来るのを待つほうがいい”~


9.ロイヤルミルクティー
たしかナインティナインのオールナイトニッポンで一瞬話題になり、その後もネット上でたびたびネタとして扱われる大名曲。
筆者はこの曲で用いられる新しい日本語表現に衝撃を受けた。例えば「人はみなすごい奴よばわりするが」という一節。「よばわり」はだいたいネガティブな評価にたいして使うが(例:なんだよあいつ、俺を童貞呼ばわりしやがって!)、前にポジティブな表現をつけることで「みんなはこう言ってくれるけど俺は納得してないぜ」というニュアンスを表している。
最大の衝撃はサビだ。Aメロでは「俳優:反町隆史」と実人生の自分とのギャップに悩む姿を描いているのだが、サビでは元カノの好きだった飲み物を連呼する。僕はそれまで歌というのは曲を通して一貫したテーマを歌うものだと思ってきたが、そんなつまらない固定観念をこの曲に壊された。
一見アコギ弾き語りの優しい曲だが、実に前衛的な試みが行われている。最後までリスナーに衝撃をあたえたまま、アルバム『メッセージ』は幕を閉じる。

~”彼女はロイヤルミルクティーが好きだった 好きだった”~


全9曲、間違いなく無人島に持っていくべき1枚。
明日もこの調子でPart2をお届けする。ついてこい。

カワグチへのサポートはフォークデュオHONEBONEの活動費に使わせていただきます。