コンビニ金融道〜3発目

コンビニ金融道と題したシリーズは一応これでラストだ。

10数年前、筆者が最初から最後まで対応した事例である。

その店のオープンからの売上実績は上々だった。
当時、その地区では出店ラッシュの時期だった。
コンビニ出店計画の流れはどのチェーンも変わりない。まず、10〜30店ほどの規模で出店を進める。2段階目として50〜100店舗だ。この100店が一つのラインとなる。
何故ならば、100店規模が一つの物流拠点の損益分岐となるからだ。
なので、一つ地域で出店する時には、100店までは出店ラッシュが起きる。合わせて、各コンビニが全国展開を目指していた最初の時期だったことも影響していた。
1年間バラけて出店がなされてたわけではない。
会社員を経験した人には理解できるだろう。年度末になれば成績の帳尻合わせに無茶だと言われるような物件も開く。
人は何故締め切りにならないと仕事をしないのだろう。もうこれは本能なのだろうか。
その年の決算末に15店もの店舗が一気にオープン。
ババを引かされたオーナーは少なくない。ババとは低日販店舗であることまで言う必要はないだろう。
そんな中、高日販店舗ではないが平均より確実に上の店舗を引いたオーナーは運がいい。
今回は、そんな良運を自ら無駄にした事例である。

オーナーは、当方と契約するまで他チェーンでコンビニ経営をしていた。
そのチェーン本部はいささか問題があり、多くの訴訟を抱えており、契約内容も今のスタンダードからは乖離しているようなチェーンである。そこのチェーンからは多くの看板替えもあり、契約の乗り換えも多かった。
コンビニの経営なんていうものは、チェーンの看板が変わってもやることが変わるわけではない。
経験者ということもあって、システムの違いも大した苦にせず、全くの初心者に比べれば仕事の把握は早かった。
売上は良い、オーナーの仕事の覚えも良い、筆者にとっても楽な新店立ち上げだった。

しかし、ゴールデンウィーク明け状況は一変した。
GW期間の売上の内、約500万円が送金されてこないのだ。
当然オーナーを問い詰める。理由は、以前のチェーンとの解約金トラブルが発生していたと言う。
店舗開発側(オーナーの募集も開発部署担当だ)も、その事実は把握していなかったと言うことだった(後にそれは嘘だとバレる)。
先に書いた通り、そのチェーンのトラブルは多く聞いていたことと、店舗の売上が好調であった理由から、毎月の利益から補填をしていくことになった。
筆者にとっては、毎月の報告書が増えて面倒だったが、未送金による契約トラブルは珍しいことでもなかったので、あまり大問題とは捉えていなかった。

数ヶ月様子を見ていたが、改善されない送金問題に二手目の動きが始まる。
まず、オーナーの負債がどれ位あるかの調査だ。例によって謎集団に調査依頼。戻ってきた調査結果に愕然とする。
銀行系の融資だけならまだしも、クレジット会社系いわゆるキャッシングで5社からMAXの借り入れ。調査で出てきただけでも1,000万円を超えているのだ。店の未送金分を加えれば1,500万円だ。

前日も書いたが、本部としては500万円くらいまでなら、商品の買い取りで取り返せる額である。当然、担当者として「緊急解約をするべきだ」と、上司に申し出た。
だが帰ってきた答えはNOである。
理由は2つ、始めて1年も経たずに解約するということは、解約違約金が発生することである。その時の試算で、1000万近い違約金となる。その回収は確実に無理である。
本部対しての負債も500万円程度であるため、訴訟問題に発展した時、解約の強引さを突かれる可能性があるとのことだ。

以上のことから、解約ではなく担保設定することで、契約継続が決定された。
この決定は、後に多くの人の人生を狂わせることになる。

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