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運転免許を持っていない話

私は運転免許を持っていない。取ったことがない。
最近、本人確認に困ることがある。
保険証はある。以前は大体これで大丈夫だった気がする。
今は、顔写真付きのものはないですか?と聞かれる。
無いというと向こうの人も困っている。

マイナンバーカードを作ればいいのだけど、
超心配症なので情報漏洩が心配で作る気になれない。
最近のいろんな不具合の報道を見ると心配は増す一方。
海外に行くこともなかったのでパスポートも作ったことがない。
資格試験の類にも興味がなかったので、
顔写真つきの資格証明書みたいなものも持っていない。

昨年、信用金庫から、何年かに一回本人確認する必要があると葉書が来た。
マイナンバーカードがあればオンラインで済む。無いと行くしかない。
それで仕方なく支店に行った時も、窓口で結構困った。保険証を出したら、
信金「免許証とか、顔写真付きのものはないですか?」
私「ないです」
信金「住民票は持ってないですか?」
私「ないです」(住民票は市役所行かなきゃいけないしタダではないし)
この確認は口座が詐欺に使われないための対策ということで、
あちらから呼んでいることもあってか、行員さんもがんばって調べてくれて、
たまたま数年前に何かの手続きをしたことがあって、
そのとき住民票を確認していたからいい、ということが分かって助かった。
また何年後かにお願いします、と言われたけど、その時どうなるか。

それから今年の春にまた困ったことがあった。
携帯電話の手続きの際の本人確認書類が変わるので、
保険証ではどうにもならなくなるらしいと。
これは困ったことになる、どうしよう、と言って夫と相談。
ほぼ家にいてパソコンかタブレットを使うので、
携帯電話はごくたまに出かける時の公衆電話代わりでしかないのだけど、
そうは言っても手続き出来なかったら困る。
実はまだガラケーなので、スマホにするとか他社に変えるとか、
いずれ何か本人確認の要る手続きがありそう。

ほとんど使ってないからいっそ解約してもいい、と言ったら、
夫「出かけるときどうするの?」
私「お父さんの借りる」
夫「二人とも出る時は?」
私「一緒にいればいいじゃん」
夫「はぐれたとき困るやろ」
私「でも、めったに出かけないじゃん」
夫「めったになくても困ったら困るんや」
私「その時はお父さんががんばって探して見つけてくれればいいよ」
夫「無理やな」
ということで解約は却下された。
原付でもいいから運転免許を取るか、マイナンバーカードを作るか、
それとも、と考えた末、携帯電話の名義を夫に変更することになった。
夫は運転免許があるので。
携帯会社のルール変更直前の週末に委任状を書いて手続きしてきてもらった。

運転免許、子どもの頃から家族に「あんたは取らなくていい」と言われていた。
両親祖父母の4人が、私には免許を取らなくていいと言っていた。
子どもの頃から大人になってもずっと。
よっぽど鈍くさくてトロい子どもに見えていたんだと思う。
私が免許に関する話をすると大あわてで全力で止められていた。
取りたいなんて言ってないのに。

体育はどうしようもなく苦手で、何をやってもダントツでビリだったけど、
運動の苦手具合でいえば母や妹も似たようなものだった。
でも母は免許を持っていた。免許取得後に一回しか運転しなかったらしいけど。
ペーパードライバーのまま高齢になって返納した。
妹は何の反対もされず免許を取って、今も日常的に運転している。
だから、私だけ運転はやめとけと言われたのは、運動面だけが理由ではなく、
無口だったこともあって、ぼーっとした子だと思われていたのかと思う。

しかし逆に私の方は、大人たちを見て、
大人って、美味いとか不味いとか、損だ得だ、とかばっかり言ってて、
質問すれば「知らん」「忘れた」って言うし、
こういう人たちが回してるこの世界は大丈夫だろうか?と本気で心配だった。
もっと環境問題とか考えればいいのにと思っていた。

大人になってバイト先などで知り合った人には、
「すごくきっちり運転しそうだから免許取ればいいのに」と言われた。
外にいる時の私はそこそこしっかりしているのかもしれない。
家の中での私はぼーっとしているのかもしれない。
車の運転は外でするものだけど、車の中はある種の室内。
もし運転したら、どっちの私が出るだろうか。

どちらにしても、家にいるのが一番好きな私は、
自分で運転して遠くに出かけたいという欲がなく、
今は幸いにも専業主婦で通勤もなく、
こどもも家にずっといたがる子なので送迎の用事もなく、
免許をとりたくもない上に取るなという家族がいれば取るはずもなかった。
夫は取ればいいのにと言っていたけど最近言わなくなった。

家族が免許を持っていれば乗せてもらえるし、
ごくたまに必要なだけなら免許と車を維持するよりはタクシーの方が安い。
職を探す場合には要普通免許という条件のところも多いけど、
私が二十代の頃は不景気で、免許を取って応募したい仕事もなかった。

そしてそんなことよりも、私は運転するのが怖い。
一般道でも時速40km/hとか、高速だと100km/hとか、速すぎる。
人間てそんな速さで空間を移動するようにできてないと思う。
しかも周囲のあれこれに十分な注意を払いながらって、私は無理。
できない、と思う以上に、万が一を考えると怖すぎる。
子どもでも乗れる公園のゴーカートですら運転したくない。

みんななんで平気なんだろう、と思いながら、
平気で運転してるこの人にとっては難しくないんだろう、たぶん、
と思って、あえて深く考えずに乗せてもらう。

ついでに言うと飛行機が飛ぶのも信じられない。
そう言ったら「理系なのになんで?」と友達に笑われたことがあったけど、
翼の形状で揚力が云々、という理屈は理解できても、
あの重さが空を飛ぶってどれだけのエネルギー?というのが、
私は生物学系だったので、物理より生物の感覚で考えて信じられない。
飛ぶことを疑うのではなく、すごすぎるという感じ。
信じられないと思いながら一往復だけ国内線に乗ったことはある。
そんなに怖くはなかった。
でも閉所恐怖と高所恐怖症があるので、早く降りたいとは思った。

自転車は乗ってたことがある。
小学校低学年ではいくら練習しても乗れなくてあきらめ、
中学生になった頃、必要に迫られ乗ってみたら乗れた。
ビュンビュンにこぐなんてことはしない。歩くよりは速い程度。
大人になって慣れてきて、ぼんやり考え事して乗っていて、
気づいたら赤信号を渡っていたことがあった。
今は乗らない。

こどもは私以上に運動が苦手で、多分DCD(発達性協調運動障害)だと思う。
医師に聞いたら「DCDは診断基準が無いから難しいけど、そうだと思います、
スポーツしなければ日常ではそんなに困らないですけどね」とのことだった。
自転車は少し練習して乗れないままやめて、もう乗る気がなくなった。
車も大人になっても運転するつもりはない様子。
事故は怖いから運転しないのが一番だと思っているらしい。
私とこどもは、完全自動運転の実現を待つことにしている。