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詩集

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練習帖ですが、よければご覧ください。
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2023年11月の記事一覧

遠くにある

地球の公転が太陽を一周した それを私はさっと横切る影を 追うように思うことにした 誰かが空間に垂直線を刻み続けるなら 私は新しい空間を覆いかぶせよう 壁の時計は床に崩れ落ちた 時計の針は止まった この世の余剰は 果てない生死の 雪の静けさ

修理工

どこからか響き渡る カンカンカンカンカン 熱い線路に耳をあて 鉄のハンマーでそれを叩く男 男のまわりに たくさんの鳩が集まってきた 男は布袋から パンを一斤取り出すと ちぎってパラパラ撒いた 鳩は羽根を散らして 騒がしく飛びついた ふたたび男はハンマーを手に 仕事に取りかかった カンカンカンカンカン 遥か遠く町の 午睡の赤児の 夢にも聞こえる音で