『君は彼方』はボール球ではない

キクs

何点か目を見張る場面があるので実況には向いている。劇場アニメ作品という概念を車輪の再発明したかのような粗削りな部分があり、見る者の器の機動力が試される一品。
劇伴音楽がかなり良いので、なんだがよくわからないシーンでもよく見えることがあった。菊ちゃんがかわいい。

この物語に謎は無い!親切なストーリー
平凡な女子高生であるところの澪ちゃんは普段の素行の悪さから、いい感じになっていた幼馴染の男子といさかいを起こしてしまう。ありがちな男女のすれ違い―――ところが関係を修復しようとした澪ちゃんに運命に定められたという結構厳しめの試練が襲い掛かる。少女の成長をエキセントリックに描くドラマチック・スピリチュアル・アドベンチャー。

澪ちゃんはとある事情で謎の池袋のような世界にやって来ることになるのだが、視聴者側からは謎が無いので分からないのは主人公の澪ちゃんだけということになる。澪ちゃんはフレンドリーなキャラクターなので感情移入できそうかと思われるが、展開についてこちらの理解と相違が生まれてしまっているので、結果なかなか厳しいものとなった。しかしながら、そういった上手くできそうな所をやらないもこの作品の魅力なのかもしれない。
相方の新(あらた)君も普通の男子高校生と思いきや、家柄からすごい力があるらしい。能力は1種類しかないが、能力発動時の描写が特徴的で戻ってきたときは逆再生みたいでファニーだった。カットが切り替わった時にいきなり要救護者みたいになっていたのもかなりファンキーでスクリーンからぶん殴られたようだった。性格面でも問題があるようで、澪ちゃんを呼び戻す為に過去の2人の会話を1人で再現する行動力には恐怖を感じた。


主人公の澪ちゃんは3教科赤点を取るおバカなJKで体力も無い、ダメダメな女の子だ。そんな人物に松本穂香 さんの声はよくマッチしているようだった。日常の演技は力が抜けていて完璧だった。
しかし後半で感情がたかぶるシーンがあるのだが、ものすごい声を出すのでびっくりしてしまった。「な˝ん˝でえ˝え˝ええ!!」みたいな台詞だったが全力で絶叫していた、どうしてオーケーになるのか理解できない。本気の絶叫声が好きな特殊性癖の持ち主なら必見かもしれない。


劇場版アニメといえばTVアニメより贅沢な画や音響が当たり前になってしまった。しかしながら企業の仕事として、ある一定のラインを超えるように、あるいは超えないように作る修正力が働いており、視聴者の想像の範疇を超えることができないことが多い。この『君は彼方』では、私の想像の斜め下くらいにどんどんボールが飛んでくる。しかし一般にストライクゾーンと言われるところを外したところで勝手にボールと言っていいのだろうか。たとえストライクゾーンで無いところにボールが飛んで来たとしても、バッターが打ち返しさえすれば、ラインを超えてストライクのカウントが増えるかもしれない。
現状、今にも映画館の彼方へ飛んでしまいそうな儚さがある上映状況なので我こそはホームランを打つというバッターの方は至急見に行った方がよい。

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