週刊Utakataん歌選。十月第二週号

十月第二週の「人気の歌」

短歌投稿サイトのUtakataの新着から、勝手に秀歌をご紹介する企画の第二号になります。noteやXとの比較で言うと、一覧性に優れているのは、やはりUtakataの大きな取柄ですね。スクロールやクリックなしで、スマホでも十首ぐらい観賞できます(パソコンならもっと)ので、おかげでこうした試みも、そこまでの手間はなくできております。もっとも一度いいねした歌を、この企画の選考過程で外したりしているのは、若干申し訳なくはありますが。なお埋め込みのリンクでも歌が読める形式にはなってますが、本家サイトでは縦書きで楽しめますので、気になる歌はポチっとしてみてください。あわせて♡もしてもらえると、紹介者としてはありがたいです。対象は、十月七日から十月十三日までの投稿分になります。

但馬吟さん。童話のワンシーンのような歌です。接吻しても目覚めない、美しい黒檀と化した姫。現実のいざこざによって汚されることなく、永遠となった恋心の美しさと、かつて思いみたであろう幸福の逃れていった悲哀が、同時に響いてくるような感興がありました。「黒檀となった姫」を「姫の黒檀」と表現するあたりもうまいですね。同氏からはもう一首。

カーテンコールを「カルテンコオル」、ギターを「ぎたる」と表記するあたり、モダンな味がありますね。観衆の喝采に背を向けるのは、今でいえば「君らの♡なぞどうでもいい」みたいなスタンスでしょうか。くぅ…… これぞ真の芸術家という感じで憧れますな。具体的なモチーフがあるのかも気になりますが、文字通りの管見の限りでは不明です。

中田満帆さん。見るからに美しい歌で、それだけでも素晴らしいのですが、芸術性が高いだけに解釈は難しかった。まず「射鹿」ですが、これは「しゃか」と読み、長野県茅野市の御射鹿池のことか。東山魁夷の絵画で著名な処のようです。それが「夜泣きする」とはどういうことなのか。あるいは「射鹿」とは、その音から、釈迦のことを指しているのか。結句の「永遠の夢」からは、哲人プラトンの説いた「イデア」の世界も連想されますが、ただ「繰り返し尽きることなく見る夢」ぐらいの意味合いなのか。考えるほどに、なるほどわからん…… といった感じですが、わからないことはわからないままにしておくことも、芸術の楽しみかたですので、それでいいとしましょう。

Yukinoさん。「心の砕けてしまう」さまの比喩としての「氷塊」。おそらく現実でのそうした体験がないと出てこない表現だとは思いますが、単なる写実ではない、奥ゆきを感じさせる歌でした。心の苦しみを、ただ単に「心が苦しい」と言ってるだけなら、「ああそう」で終わりになってしまいますが、こうして身体の苦しみになぞらえると伝わってくるものがありますね。ごつごつした言葉運びも、凍えるような寒さをイメージさせます。


ここからはコメント抜きで投稿順に。


勝手に選者でもやってるようで恐縮ではありますが。ここで紹介した歌はすべて、自分でもノートに書き写して観賞させていただきました。ありがとうございます。

ちなみに前号はこちら。

小生の歌はこちらから。歌の推敲ノートさながら、だいぶとっちらかしてる感じですが。