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#6【触るグリフ体験記】触るグリフをやってみよう!

字が読めない夫と18年ぐらい暮らしてきて、字を書く練習もちょっと違う、私が代わりに書いたり、読んだりすれば困る場面もそんなにない。でも、読み書きコンプレックスが解消されれば良いのになぁ。と頭の隅に引っかかりながら生活していました。

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今日は2022年8月。
1年半前の2021年の初め、夫が43歳の時に触読学習シート「触るグリフ」を始めて、読み書きがかなりできるようになりました。このnoteはその簡単な記録です。

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触るグリフを知る

ある時、インターネットの中で『触覚で文字を認識するルートを脳内に作る』みたいなものを見ました。別にディスレクシアの事を調べていたわけでもなく、読み書き学習の方法を探していたのでもなく、全然関係のない所で不意に見つけました。

というか読み書き学習させる気は全く無かったのに「脳に働きかける?、これ、夫に良さそう。」とすぐに興味を持ちました。

ラマチャンドランのミラー療法を連想しました。ご存知ですか?

腕や脚を無くした人が無いはずの腕や脚が痛たむ幻肢痛を治療する方法で、真ん中に鏡がある箱に手(脚)を、入れてグーとかパーとか動かして、その様子を自分で見て無いはずの手(脚)があるように自分の脳を騙す。これ続けると幻肢痛がなくなる事があるそうです。また、片麻痺の治療にも使われています。麻痺してない腕を入れて手を動かして、自分では両方動いてるように見える、脳を騙すとだんだん麻痺した方も動くようになってくるという感じ。
鏡の箱で「幻の手」の位置に映した正常な手
(Ramachandran, Rogers-Ramachandran Proc. Royal Soc. London, 263, 1996より改変)

皆んなが皆んなに効くわけではないみたいですが、これって脳を騙してるんですよ。人間の身体って不思議ですね。

普通の片麻痺の訓練だと、動かない手を頑張ってグーパーグーパーしたり、痛いのを我慢しないといけないし、思い通りに動かなくてもどかしかったり…。それが脳を騙すこのミラー療法は痛みとか我慢とかはありません。

片麻痺の訓練ってディスレクシアにとっての読み書きの練習と似てるなと思いました。頑張って頑張って書き取りしたり、漢字10回書いたり苦痛でしょ。効果がないわけではないでしょうけど、辛い思いしないといけない…。夫の場合その大変さに比べたら今の読み書き出来ないままの方がマシという事で練習もしないと決めてました。でも、

この触るグリフは脳に働きかける?ミラー療法みたい!やってみたい(やらせてみたい)!

と思いました。

この先生、和製ラマチャンドランやん!

私はその開発者の先生にコンタクトをとる事にしました。

触るグリフをやろう!

なんせ、ディスレクシアと診断されてるわけでもないし、どう言ったら良いものかと考えて

「私の夫は43歳で、字が読めません。例えば『おおくぼくだもの』これは読めません。漢字もあまり知りません。でも漢字だけじゃなくて平仮名だけも読みにくいです。これはディスレクシアですか?先生の開発した触覚で文字を認識するルートを作るというものに関心があります。」

という感じでメッセージを送りました。先生からは

「多分ディスレクシアですね。ディスレクシアとは〇〇〇〇〇〇(説明)こういうもので、△△△△とか読みにくいですよね?触るグリフは〇〇〇〇〇〇(説明)こういうもので、成人ディスレクシアの人も使っていただけますよ。」

と返事がありました。先生の『△△△△とか読みにくいですよね?』がビンゴすぎて、さっすが専門家!すごっ!って思いました。私より夫の読み間違いに詳しい人には会った事がなかったので「なんで分かんの?」って変な気持ちにもなりました。

すぐに「触るグリフやりたいです」と申し出て、その後先生からいくつかの質問をいただいて答えたあと

  • 文字が凸になった特殊なシートを指で触って文字を読む事

  • 2ヶ月ぐらいで終わる事

  • 金額

などの説明を受けました。

自分でピンと来たくせに「凸のあるシートを指で触るってどんなんやろう?」って不思議に思いました。

そしてたった2ヶ月で?という不安。短すぎん?こっち(夫)は43年ディスレクシアやってんねんで!って。

それと安すぎる金額。

正直私はもっと高いと思っていました。ずっと読み書き出来ないまま大人になった43歳ですよ。読めるようになるなら100万でも安いと思った。現実的には100万円は無理なので20万円ぐらいなら、なんとか用意できるし、効果がなくても諦められると考えていました。

とにかく安くて簡単でで宮崎に住みながらできる。嬉しかったなぁ。

帰宅した夫に

「字が読めるようになるかもしれない、良さそうなのがあるんやけど、、、やってみん?」

と聞いたら

「俺も字が読めるようになってみたいから、やるわ〜」

軽くOKされました。

それから触るグリフが届くまでの間、2人で「文字が凸のシートってどんなんやろな」とあれこれ想像して楽しみにしていました。

触るグリフしなくて良いんちゃう?

その少し前、夫が体調を悪くしてて回復したけど経過観察で通院していました。いつものごとくついて行っていた時に、待合室で問診票を渡された夫は

「字を読む訓練も始める事やし、自分で書いてみるわ」

と初めて自分で問診票を手に取りました。私は記念に動画撮影しました。

問診票の質問をペンでなぞりながら小声で読んで(黙読できない)「どのような症状で受診されましたか?」の質問に、「貧血」と書きたかったけど漢字が分からなくて、カタカナで書いた。脳内で文字が入れ替わって「ケン」と書いてしまって、それを消して「ヒンケツ」と書きました。字を知っていても、パッと文字が浮かばない事が多いみたい。

2021年 1月

そして夫がその文字を私に見せて2人で「ハハハ」と笑いました。夫の「ハハハ」は私が嫌だった誤魔化すような照れ笑いじゃなくて、普通に「ハハハ」と笑ってて、嬉しくて涙が出そうでした。

私は夫にこうなって欲しくて触るグリフを勧めたんです。やろうと決めただけでその望みが叶ってしまいました。

もう、触るグリフしなくて良いんちゃう?

って思いました。本気で。

どれだけ読めるようになったか知るために、夫が文章を読んでいるところも動画に取る事にしました。

漢字があまり読めないだけじゃなくて、平仮名だけ、カタカナだけ、の文字も苦手なので絵本もちょっと厳しそう…という事で本棚から漢字仮名混じり、振り仮名つきの児童書『トム・ソーヤーの冒険』を選びました。

動画を撮影しながら、3〜4ページ読んでもらいました。夫が文章を読むところをまともに見た事がなかったので、それだけで可笑しくて笑い過ぎてしまいました。

このぐらい読みの現状はこんな感じ。参考に動画を貼り付けておきます。

この日は布団の中で、夫が文章を読む動画を繰り返し見ました。


終わりに

夫は本も漫画も国語の教科書も1冊も読んだ事は無いそうです。

もちろん新聞もネットニュースもnoteも読まないし、Twitterもしません。LINEとメールはほんのちょっと。

読めないだけじゃなくて、読まない、読みたくないというのも大いにあると思います。

次回は触るグリフが届いていよいよ実践です。早くから変化がありました。

触読学習シート『触るグリフは』こちら

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