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寝相

 結婚するまで知らなかった、かーちゃんの秘密が2つある。
 一つは酒ぐせの悪さ。もう一つは寝相の悪さ。

 酒ぐせは、私としては嫌なものではなく、むしろ爆笑の連続なので、また機会があれば、ブログなどでも紹介しようと思う。

 それよりもやっかいなのが寝相。結婚当初は布団を敷いて寝ていた我々夫婦。隣に寝る夫である私に、裏拳は飛んでくるは、蹴りは飛んでくるはで、それはそれは大変だった。

 ある時の蹴りは私の鳩尾を直撃。熟睡中だった私の息が止まり、危うく息を引き取るのではないかと思ったほど、強烈だった。

 またある時は、かーちゃんに背中を向けて丸まって寝ていた私の背中を何かが押している。何度も何度も押されて不思議だったけど、かーちゃんから離れることで解消。朝起きて聞いたら、その時に来ていた私の青いTシャツを、寝ぼけたかーちゃんは青いカバンだと思ったらしく、

「なんでこんなとこに鞄があるのよ。邪魔ねー」

 と思って、足で遠くに蹴飛ばそうとしていたらしい。

 裏拳にいたっては物を破壊するほどの威力。当時、目が悪かったかーちゃんが、寝る時に横に置いていた自分のメガネを自身の裏拳で破壊。朝起きたらフレームからレンズが外れていた。そんな裏拳も私の顔やら首やら胸やらに時々飛んでくるもんだから横に寝るのも命懸け。


 前回、私の全身麻酔体験記を書いたけど、かーちゃんは病院でもやらかした。

 全身麻酔のオペ後、病室に戻ってきた、かーちゃん。

 看護士さんに

「移植した右手と右足は、タオルケットで台を作ったので、その上にのせて下さい。安静にしてくださいね」

 と言われたらしい。

 麻酔が残っていたかーちゃんは、その後すぐに眠ってしまったようだ。

 寝ること二時間。

「川西さん、川西さん…」

 と呼ぶ看護士さんの声で目が覚めたかーちゃん。

「手と足は、安静でお願いします…」と、申し訳なさそうな声。

 包帯でぐるぐる巻きの手も足も、ベットから投げ出され、
 酸素マスクは、なぜかかーちゃんのおでこの上にあり、
 さらには、患者がする(バーコードが印刷されてる)リストバンドが外れていたらしい。

 一体、どれほど暴れたら気が済むんだろう。

 今は寝室は別だけど、横にいるかーちゃんの部屋から、たまに壁をドンドンする音が聞こえてくる。

 アラフィフなんだから、そろそろ落ち着いてくれよと思う今日この頃だ。

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