幻の善行

今日、見逃した善行が2つある。
1つ目は通勤途中の道路で、風に舞うビニール袋があった。コンビニでもらうような袋ではなくて、どれかと言うとジップロックに近いような、そういう硬そうなビニールだった。
目で追いかけているうちに、あれよあれよと踏切の隙間から線路に入った。これから私が乗ろうとしている路線だ。あと5分ほどで電車が来る線路に、ビニール袋が入り込むというのは、悪い想像が浮かぶ。
道路にあるうちは拾えたかもしれないが、線路に入ってしまうと立ち入ることはできない。さっき拾えばよかったのに、と思いつつ、これから仕事に行くのに、ビニールをどこで処分しよう、というブレーキの方が強くかかって動けなかった。
残念ながら片田舎の寂れた路線なので、この駅には駅員がいない。いるかもしれないが、見当たらない。ビニールはなおも線路の間の砂利に引っかかってはいるが、この強風で飛んでしまうかもしれない。頼むから、車輪にだけは挟まるなよ、と思いながらぎゅうぎゅう詰めの車内に身体を押し込んだ。

もう1つの見逃した善行は、帰りの改札で。
目の前を歩いていたリュックの大きな女性が、改札を通った直後、何かのカードを落とした。定期では無いな、と思いつつ、拾おうと思って、でも私は歩をだいぶ進めてしまっていて、取りに行くには戻らなければならない。でも、ええい、と思って、ようやく引き返してみると、すぐ後ろにいたのであろうおば様が「落としましたよ」と言いながらカードに手を伸ばしていた。
リュックの女性は気づかずに、エスカレーターを昇っていく。私と言えば、滑ってなかなかカードを拾えずにいるおば様を手伝うがいいか、エスカレーターの女性を呼び止めるのがいいのか、判断がつかないままその間を右往左往するのみ。そのうちにおば様がカードを拾い上げ、声をかけていた。
ただただ、階段付近で反復横跳びしただけの人。恥ずかしい。
エスカレーターで呼びかけて、後ろにひっくりかえりでもしたら危ないしな……などと言い訳しながら、もう少し反射的に助けられる人でありたいな、と思う。

今年はスターバックスの福袋に応募したけれど、この調子じゃ、当たらないかも。

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