ホタテをなめるなよ

東急ハンズでホタテを買った。
もちろん本物ではない。
食品サンプルのマグネットである。

一目惚れだった。
食品サンプル系の商品は割と好きで、売り場をしょっちゅう眺めていた。
寿司やらスイーツやら有名どころが並ぶ中、私は一瞬で恋に落ちた。
ホタテの焼いたやつのサンプルである。

ホタテのバター焼きがすげぇ好きだ。
敢えて醤油は使わない。
塩コショウとバターでソテーする。
私は意地汚いので、まずは周りの卵とヒモを剥がすようにして食べる。
もちろんこの部分も旨い。
そして、残った貝柱をゆっくり味わうのだ。
甘い。甘すぎて旨すぎる。
海はしょっぱいのに、何故にホタテはこうも甘いのか。
自然とは不思議なものである。
しかし味だけではなくて、あの貝柱を中心としてエラとかヒモとかオレンジ色の卵とかがくっついている独特のフォルムもなんとなく好きなのだ。

そんなわけで、ホタテ好きの私はホタテマグネットを買うに至った。
その場にいた15年来の友人二人は、心なしか引いていた。
結局、市街地まで買い物に行ったにも関わらず、私が購入したのはホタテだけだった。

家に帰って定位置(娘と共有している二段ベッドの下の段)に潜り込む。
天井にホタテをつける。
いい眺めだ。
ホタテと見つめ合いながら眠りについた。

翌日、ホタテを天井につけたことをすっかり忘れていた私は、ホタテの存在に思い切りビビっていた。
いくら好きなものでも、ベッドスペースにいたらそりゃビビる。
しかも剥き身だし。

あー、なんかホタテ食べたくなってきたな…