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世の中には2通りの人間がいる

ずいぶん前のことだけれど、なぜか心を軽くしてくれた一文がある。

「世の中には2通りの人間しかいない。
蚊に刺されて皮膚が化膿している人間と、そうではない人間だ」

確か、当時はまっていた恋愛小説中に登場した一文だったように思う。

一つのことで心が塞がれているうちは、世の中が二分して見えるほどそのことだけしか考えられなくなる。
他人からしてみればとんでもなく些細なことであっても、当の本人からしてみれば己の関心の全てが注がれるほどの重大事だったりする。

その頃の私も、何か、今では思い出せないほど小さなことで思い詰めていて、
(でも恋愛小説を読んでいたくらいなので気を紛らわせられるくらいの余裕はあったんだろうけど)
「どうして私だけが」とか「周りは気楽でいいな」とか、良くない思考回路にはまっていたんだけど、

この一文を目にした時に、ふと、自分を外から見ることができた記憶がある。

確かに虫刺されで皮膚が化膿したら、
「どうしたらこの不快感から逃れられるだろうか」「跡は残らないかな」「友人に見られないような服を着ていこう」と、思考が虫刺されを中心に巡っていくだろう。

お腹を下している時はその痛みに、
虫歯で患部が腫れている時はその無様さに、
テストで落第点をとれば情けなさに、
恋をすれば相手との妄想に、

私たちは支配されて気付かぬうちに論理性を頭から締め出してしまう。

そのことが分かっているだけで、
今がひょっとしたらその状態かもしれないと気付くだけで、
不本意な思考の膠着状態は避けられるかもしれないし、避けられずとも上手く付き合えるかもしれない。

憂鬱から抜け出せないときは、疑ってみることだ。

「ああ、今私は虫に刺された側の人間かも知れない」

#人生 #処世

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