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港区女子が九州でワーケーションしたら、キラキラした。

物理的な意味でな!!!!!!!

ワーケーション


自信に満ちてキラキラ充実している私!みたいなものを想像したのかもしれないが、そんな意識の高い話をするわけないだろう。そもそも私港区(に勤務先と住所があるだけの)女子ですし。
しかしページを閉じずに、だまされたと思ってこのキモすぎる話を読んでほしい。いい話は最後にする予定だ。

ワーケーションに至るまでの経緯

何が何だかわからないだろうから事の発端から順を追って話す。私は東京都港区六本木から、九州のある都市まで引っ越すことになった。まずは引っ越しの見積もりを見てみよう。いきなりお金の話かと自分でも驚くが。

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印字された約22万円が当初提示金額で、手書きの約12万円は最終金額だ。
何故こんなに安くなったのか?答えは簡単である。チャーター便を使わないことにしたのだ。

引っ越しで最も大きな費用を占めるのはトラック代だ。荷物の量によって変動する料金なんてたかが知れている。「〇日に荷物を出して→〇日に必ず届ける」を希望すると、自分の引っ越しのためだけにトラックを抑える「チャーター便」を使うことになるから値段がはね上がるのだ。

これが他の荷物との相乗りで運ぶ場合、費用は割り勘になるから安くなる。
後者を選んだ私は、激安の引っ越し料金を得ることができた。もしこれから引っ越しをする方がいらっしゃれば、参考にしてほしい。

しかし、安いだけに強烈な難点がひとつだけある。

到着日を指定できないのである。

今回は「1月23日に荷物を出して→25日~31日までのどこかでお届けします」という何とも幅の広すぎる設定であった。最大1週間の待ち期間を、どう過ごしたものか。
通常ならここでホテルを探すところ、私は別のものを探した。

うん。寝袋あるわ。

何もない家の中でキャンプをしよう、とその瞬間決意した。ライフラインは開通させるにしろ、照明器具がないから夜は真っ暗。カーテンもないから太陽の光が降り注ぐ。雨風がしのげるだけで、そこは実質野外なのである。こんな場所でリモートワークするのは、いわゆるワーケーションってやつじゃないか。おしゃれすぎる!

どうせならばちゃんとキャンプっぽくしたいと思った私は、ルールを一つだけ決めてみた。

「キャンプで使わないものは使わない」

例えば非消費財について買い足し可能なものは、アウトドア用品のみ。消費財について、コーヒーを例にとるならば、スタバのコーヒーはNG。山の中にはスタバがないので。インスタントコーヒーはOK。お湯を沸かして山の中で飲むことはできるからだ。ほどほどに非日常感も楽しめそうで楽しみだな~と期待に胸をふくらませ、あっという間に当日を迎えた。

初日、開始30秒にして私は悟った。
これは、ワーケーションというよりも戦いだ。色々なものが私の日常を妨害してくる。
とてもじゃないが、まともに仕事、生活するだけでも結構無理がある。

いいぞ、受けて立ってやろうじゃないか。いざ開戦だ。

1回戦:仕事環境

床vs私→床の勝ち

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まずそもそも床にノートPCを置いて仕事するのはかなり厳しい。特に首と肩の不快感が尋常ではない。次にあぐらをかいて太ももにPCを載せてみるが、タイピングするたびカタカタ動いて、水平な場所でないと全く仕事にならない。30分ともたなかった。完敗。

キッチン+キャリーケースvs私→引き分け

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これは強い。かなり作業しやすい。高さが相当マッチしている。ただし玄関付近なのでめちゃくちゃ寒い。そしてキャリーケースがペコペコして壊れないか気が気でないので、引き分け。

アウトドアテーブルvs私→私の勝ち

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劣悪な作業環境に我慢ならず思わずアウトドア用品店に駆け込む。やっと見つけた私のベスト作業環境。これだよこれ。首も痛くないし肩もこらないし!
地面に座る・チェアと合わせて使う、どちらにも対応可能な高さ2段階調節タイプを買ったのだが、高く設定するのがPC作業にはベスト。
皆も家でキャンプをするときにはぜひ参考にしてほしい。まあ家でキャンプなんて誰もしないだろうが。

2回戦:インターネット環境

私物Wi-Fivs私→私物Wi-Fiの勝ち
過去、博多駅前や六本木など都心の極みにしか住んだことのない私は、家でWi-Fiが入らないなんて想像もしていなかった。しかし見事なまでに入らない。窓際をどんなに探索しようとも、微弱に電波が一本立つ程度だ。試しに無理やりつないでみたが、遅くて阿部寛のHPすら開けない。

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完敗…。阿部寛のHPを開けないWi-Fiに用はない。速攻で解約した。

家のWi-Fi vs私→家のWi-Fiの勝ち
インターネット無料の契約のはずだが、備え付けのWi-Fiは全く電波が入らない。よくよく入居説明書を読むと、「電波が入りづらい部屋がございますので管理会社へご連絡を…」とのこと。入らんのかい。完敗。

テザリングvs私→私の勝ち
もうこうなったらテザリングしかない。なんだか来月の携帯料金の請求がすごいことになりそうだが、背に腹は代えられないからテザリングで仕事をする。
電波としての戦いには勝ったが、財政的には敗北を喫した気がしてならない。後味の悪い勝利である。

3回戦:飲食

水道水vs私→私の勝ち
喉が渇いた。しかし安直にコンビニに行くわけにはいかない。山の中にはコンビニはないからだ。飲み物はなにかあるかと部屋を見回すと、あるじゃないか。水道が。

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水おいしーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
なんか角がなくてめちゃくちゃまろやかだぞこれ???
私をなめるんじゃないよ。私は東京の水道水をがぶ飲みできるマンなんだよ。富裕層に満ちあふれた六本木で水道水を常飲していた住民は私くらいだろう。そんな私にとって地方都市の水道なんてごちそうに決まっている。私の圧勝。

鍋で炊く白米vs私→引き分け
キャンプといえばとにかく米を炊く!

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もうね、炊ける香りも最高だし、ふたがカタカタするのを眺めているのも楽しいし、うまく炊けて鍋ならではのおこげもできて、最高だった。でも…

1合食べきるの、辛すぎる。

私が持っているライスクッカーで計ることができる最少の単位は1合なので、1合で炊くしかない。しかし冷凍庫がないので余った分を冷凍できないのだ。
女性の1食は0.4合と言われている。通常の2.5倍の白米を食べるのは苦行でしかない…よって、引き分け。米以外の主食を食べることを心に誓った。

4回戦:夜の暗さ

LEDランタンの明るさvs私→引き分け
日も暮れてくると、大分手元が暗く、怪しくなってくる。そんなときこそこいつの出番だ、LEDランタン。

うおっまぶしっ!!!!!!!!!!!!!!!!

LEDランタン、PCの近くに置けないよこれ。まぶしすぎる。目を閉じると残像がちらつく。シパシパとまばたきをしながら、Google先生に質問する。
「LEDランタン まぶしい 対策」
なるほど。何かで覆えばいいわけか。レポート用紙を雑にかぶせた即席カバーを作ってみる。

無駄におしゃれな雰囲気で鎮座したそれは、今や私に完全に制圧されている。が、攻撃された目のチカチカダメージはしばらく回復しそうにない。よって引き分け。

LEDランタンの暗さvs私→私の勝ち
更に日が暮れてくると、いよいよPCの黒いキーボードが見づらくなってくる。

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通常のワーケーションだと、この時間はもう酒が入っており仕事なんかきっとしていない。だが、私はあくまでも日常の一環にキャンプがあるだけなのでまだまだ働く。
LEDランタンだけでは心もとない手元を、どうするのか。航空機の読書灯に着想を得た私は、再びアウトドア用品店へ走った。

結果がこれだ。キーボードがはっきりと見える、大勝利。

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何を使ったか。



そりゃ、これしかないでしょ。



ヘッドライトだよーーーーー!!!!!!!!!!!

ワーケーション

※Web会議をするときは相手の目をつぶさないようにお気をつけてご利用ください。

どう考えてもキモすぎるだろう、ヘッドライトをつけて働いているビジネスマン。まあ、そもそも家の中でキャンプしている時点で一から十まで全部キモいので大丈夫。むしろ平常運転だ。

5回戦:睡眠環境

静けさvs私→静けさの勝ち
静かだとよく眠れる、一般的にはそうだろう。実際私は上京したての頃、首都高やサイレンの音がうるさすぎて眠れなかった。ちなみに私の六本木の家の中は、平均50db。夜間45dbを超えると騒音であるから(環境庁定義)、常に騒音の中で眠っていたわけで、都会の恐ろしさを物語っている。

それに比べてこの家は、平均40db。段違いに静かな環境なのである。これが安眠につながるかというと、全然そんなことはない。なんならしょっちゅう目が覚める。

静かすぎるからこそ、ちょっとした物音がめちゃくちゃうるさいのだ。

隣人が帰宅した音がドタドタ響く。学生が多いマンションなので、深夜アルバイターも多いのだろう。0時を回っても人の出入りが頻繁だ。何度も物音に驚かされて目を覚まし、熟睡した気にならない。静けさには完敗だ。(いつか克服できますように…)

床vs私→床の勝ち
仕事環境でも強敵だった床は、やっぱり寝る段になっても強敵だった。寝袋の下に敷くマットを買い忘れたことが主要因なのだが、とんでもなくお尻が痛い。

いや、当たり前だ。硬いフローリングの床に寝ているのだから。どの向きに寝返りを打っても体がどこかしら痛むので、ごろごろと向きを変えては、ましな寝方を模索した。

基本的に床の辛さというのは、眠りに入る時に強く感じるものだと思う。(意識がひとたびなくなれば感じようがない)しかし先述の通り、私はいちいち物音に目を覚ましているのである。そのたびに、
物音にびっくり

目が覚める

お尻が痛くて眠れない
のループに入るのだ。

近隣住民よ、お尻を蹂躙しないで。

…なんてシンガーソングライターらしく韻を踏んでいる場合ではない。もうこれは明らかに惨敗。だからと言って米のように今後は炊かなければよいという問題でもない。毎日寝る必要がある。私は床と、戦い続ける。これからも。(明日マットを買いに走ろう、絶対に)

ちなみに5回戦まで戦った2日目の夜現在、いまだに引っ越し業者から「●日に荷物を入れられます」という連絡は来ない。本気の長期戦になりそうで、いつまで自分が耐えられるのか、そしてどのようにさまざまな戦いに勝っていくのか、ワクワクしているところである。

戦いの中で、考察する

私が今回引っ越しをした理由は4月から大学の医学部に通うからで、住む場所や交友関係の激変だけに留まらない、人生の根本的な変化を意味するものだった。

予期できない未来に対する不安。
培ってきた関係性から離れる寂しさ。

暗い気持ちをいっぱいに抱えた引っ越しのスタートに、何もない家でキャンプだなんて面倒なことを何故しようと思ったのか。

恐らく私は、「乗り越えられるハプニング」を期待したのだ。
事実私はキャンプをしようと思い立ってから、準備するものや起こり得る困りごとは何かをシミュレーションしていた。例えば、トイレットペーパーを買い忘れてトイレに行ってしまうとか。考えただけでもおそろしい…。
そして、思い浮かぶたびに買い物リストは長くなり、計画は緻密になっていった。

人は事前に困難を予期して準備できたとき、自己効力感が高まる。
ネガティブな気分の人にとって、それがどれだけ救いになることだろう。今回のキャンプは、弱った私の救済手段のだったのである。

春が来る。多くの人に環境の変化が訪れる。変化につきものである浮かない気持ちと向き合うとき、「乗り越えられるハプニング」はきっと心強い味方になってくれる。

いつもの駅の帰り道、慣れないルートで歩いてみる。
いつか着なくなった服を、掘り起こしてコーディネートしてみる。

あえて起こした変化を、軽々とこなす自分に気づいたそのとき。

どんよりした気分は晴れ上がり、キラキラした自分はもう、そこにいる。

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