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【将棋】打ち歩詰めの新解釈
将棋のルールは厳密に整備されているように見えて、実は不備が残っており解釈が一意に定まっていない部分があります。
「打ち歩詰め」も解釈が一意に定まっていないルールの1つで、解釈次第で詰むか詰まないかが変わってしまう局面が存在することが、従来から知られていました。
今回は、打ち歩詰めについて従来にない新解釈をする局面を考えました。
下記局面で「△3四歩と歩を打って王手した手は打ち歩詰めである」というものです。
解釈の意図は、
持駒の歩を打って王手された局面で、その時点で連続王手の千日手が成立する局面
が打ち歩詰めであるとみなすことです。
ここからは、従来の打ち歩詰めに対する解釈を振り返りつつ、新解釈の解説をしていきます。
1.打ち歩詰め
まずは通常の打ち歩詰めについて。
持駒の歩を打って王手された局面で、次に何を指しても玉を取られる局面
【図1.1】
【図1.1】から、後手が持駒の歩を打って△1六歩と王手します【図1.2】。
【図1.2】
先手は玉をどこに逃げても取られてしまうため、歩を打って玉を詰ましたので、打ち歩詰めとなり、後手の反則負けになります。
2.突き歩詰め
次は突き歩詰めについて。
盤上の歩を突いて王手された局面で、次に何を指しても玉を取られる局面
【図2.1】
【図2.1】から、後手が盤上の歩を移動させて△1六歩と王手します【図2.2】。
【図2.2】
先手は玉をどこに逃げても取られてしまいますが、歩を打たずに玉を詰ましたので、打ち歩詰めではなく普通の詰みとなり、先手の負けになります。
3.ステイルメイト
次は王手をしないで詰ます特殊なケースについて。
持駒の歩を打って王手以外の手をされた局面で、次に動かせる駒が1つもない局面
【図3.1】
【図3.1】から、後手が持駒の歩を打って△2八歩と王手ではない手を指します【図3.2】。
【図3.2】
先手は持駒がないため、玉を動かすしかありませんが、どこに動かしても玉を取られてしまいます。したがって、【図3.2】は動かせる駒が1つもない「ステイルメイト」の局面です。では、先手玉をステイルメイトに追い込んだ△2八歩は打ち歩詰めなのでしょうか?これについては現在でも解釈が一意に定まっておらず、詰み/不詰みは不定です。
4.最後の審判
縫田光司氏が1997年1月、詰将棋パラダイス誌で発表した詰将棋「最後の審判」。
この詰将棋の作意は、
持駒の歩を打って王手された局面で、次に連続王手の千日手でしか王手を外せない局面
が「打ち歩詰め」なのかどうか?を問うものです。結論から言うと、現在でも解釈が一意に定まっておらず、詰み/不詰みは不定です。
本作は69手詰めですが、ハイライト部分を説明します。
【図4.1】
【図4.1】から、後手が持駒の歩を打って△5六歩と王手します【図4.2】。
【図4.2】
【図4.2】から、先手が▲5六同角と歩を取って自分の王手を解除しながら相手玉に王手をかけます【図4.3】。
【図4.3】
ここで、▲5六同角と歩を取った【図4.3】が、事前の手順で既に3回出現していて(説明省略)、今回同一局面として4回目に現れたことで、「連続王手の千日手」となり、先手の反則負けとなります。
戻って、【図4.2】では▲5六同角と歩を取る以外で玉を動かす手はすべて玉を取られてしまいます。したがって、【図4.2】は打ち歩詰めなのではないか?というのが作者の意図です。
5.新解釈
最後に新解釈の説明をします。
解釈の意図は、
持駒の歩を打って王手された局面で、その時点で連続王手の千日手が成立する局面
が打ち歩詰めであるとみなすことです。
【図5.1】
まず【図5.1】から、以下の手順で【図5.2】に進めます。
▲4五馬 △3四歩…①
【図5.2】で△3四歩の局面が出現1回目になります。
【図5.2】
次に【図5.2】から、以下の手順で【図5.3】に進めます。
▲同馬 △2二玉 ▲4四馬 △3一玉 ▲3二歩 △同玉 ▲5四馬 △2三玉 ▲4五馬 △3四歩…②
【図5.3】で△3四歩の同一局面が出現2回目になります。
【図5.3】
あとは【図5.3】から同手順で、△3四歩の同一局面が4回出現するまで繰り返します【図5.4】。
【図5.4】
一連の手順は、
・先手は王手を連続している。
・最終局面(【図5.4】△3四歩)で同一局面が4回出現する。
・△3四歩は後手の持駒の歩を打って先手玉に王手している。
となっています。
ここで「連続王手の千日手」の定義を日本将棋連盟のHPで確認すると、
連続王手の千日手とは、同一局面が4回出現した一連の手順中、片方の手すべて王手だった場合を指し、王手を続けた側がその時点で負けとなる。
従って開始局面により、連続王手の千日手成立局面が王手をかけた状態と王手を解除した状態の二つのケースがある。
と記載されています。(第8条 反則)
上記手順はこの「連続王手の千日手」の定義要件を満たしており、【図5.4】△3四歩の局面は、連続王手の千日手が成立し、先手反則負けになっていると考えられます。
そうすると、△3四歩は後手の持駒の歩を打って先手玉を詰ましたことになり、打ち歩詰めとなるのではないでしょうか?
この解釈の争点は、歩を打って王手して、相手を連続王手の千日手の反則負けに追い込むことが、打ち歩詰めに該当するのかという点です。
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