犬ももう一度飼いたかったが、犬の寿命を考えるともうすぐその決断のタイムリミットがくる。年齢を重ねると体力や気力だけでなくそういう期限もくる。

去年、あと二年くらいで自然に崩壊するといわれた家が解体されつつあるが、一番長持ちする家はこれ、みたいな会話をしたときの話

その売却を担当した不動産屋の方は結構高齢で、結構頻繁に連絡してくれていた。書類も送ってきてくれていた。たまに家の前で進捗などを報告してくれた。

私の家をみて、「これは〇〇(ミサワとかタマとかそういう業者)で建てたんですか?デザインがそんな感じで……」という会話から、「いやほんと住んでみてわかりましたね。ブロック造の三角屋根の敷地方形の家が一番長持ちしますね、屋根に凝ったりするとほんと、凝ったところから壊れてきますね、私の親はそういうのわからんかったからこんな屋根の重なりになってんです」と私が言うと、

「そりゃ仕方ないです、素人なんだから。普通の人はみんなそうです。で、家をデザインするときに、新しく自分で建てる人はみんな『間取りから入る』んですよね。間取りを先に考えて部屋の形を考えて、そして家を建てる。それはおすすめできないんですよ、でもみんなそうやるんです」

という返事をもらった。

確かにうちの家を建てる前、母も父も私も兄弟姉妹も、全員が方眼紙に自分の思う間取りを書いて比べて遊んだ記憶がある。間取りから入っていた。さすが建築屋も兼ねた不動産屋、正しい。その通りのことを私ら家族はしていたよ。

きっともう私は新しく家を建てるなんてことはしない。私の年齢が三十くらいなら考えてもいいが、もう新しく建てるのは不経済だ。高いギターももう買えない。残りの使用時間から考えると価格に釣り合わないからだ。新しく編纂された叢書や全集ももうきっと買わない。もう残り時間はそんなにないから。

二十代の時に高い叢書をいろいろ買った。あの時買っておいてよかった。

あと、犬ももう一度飼いたかったが、犬の寿命を考えるともうすぐその決断のタイムリミットがくる。年齢を重ねると体力や気力だけでなくそういう期限もくる。

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