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「手打吉兆」もヤバい/ヤバすぎ高槻/手打ち蕎麦編

「腰がお嫁さんになってるぞ」
とは読売巨人軍元監督である長嶋茂雄氏の至言だ。
まさに手打吉兆・阪急高槻店のソバこそ「腰がお嫁さん」だった・・・


街の繁栄はグルメを見れば一目瞭然

街の繁栄はグルメの充実度と比例する。
人が集まれば、密度の経済にのっとって「安く美味く」が実現する。
したがって、
その街が繁栄しているかどうかは、その街のグルメを精査すれば解像度が俄然上がる。
つまりワタシにかかえれば、かりそめの街の繁栄なんぞは一発で見破れるのだ。

さて大阪は高槻市の中枢たる阪急高槻駅。
JR高槻駅とともに、
「本当に住みたい街ランキング(関西エリア20位ぐらい)」に顔を出す常連駅だ。
この阪急高槻駅から南へ徒歩2分のところに「手打吉兆」さんがあった。
どうやら手打ちソバと手打ちうどんがご自慢のようだ。




優しいランチメニュー

なんと手打吉兆のランチメニューは15時まで。
これは助かる。
押し並べてランチタイムというのは、あたかも示し合わせたように14時でガシャんしてしまいがちだ。
これでは少しお昼が遅くなっただけで、流浪のランチ難民になってしまう。
だからランチを15時までやってくれるのは大助かりだ。

ランチメニュー650円〜

価格の方も相当に優しい。
わかめうどんセットが650円からとなっており、くたびれた財布にも優しい価格設定だ。
しかしながら、
手打吉兆ならソバを食うべしと風の便りが教えてくれたので、ここは少し奮発して「わかめそば・ミニ鶏そぼろ丼セット@950円」を注文する。
ワタシとしては手打ちといえばウドンなんだが、ここは風まかせでいこう。

ネギ 天かす

前衛部隊としてネギと天かすがわんさか派遣されてきた。
これはなかなかに壮観だ。
風の便りによればコロナがまた流行り出したようだが、
これだけの質量のネギ・天かすを剥き出しとは、
信頼してもらっているのかなと、少し嬉しくも悲しくもなる瞬間だ。



トロける像

わかめそば・ミニ鶏そぼろ丼セット@950円

さ〜て、
待ちに待った真打ちのお出ましだ。
なんとなくウドンに見えるが、きっと手打吉兆のソバは特別製なのだろう。
手打ちであるため完成度にバラツキがあるのかもしれない。

まずはミニ鶏そぼろ丼をお口にそっと含む。
う〜ん、美味い。
これはお口の中から海馬にかけて期待が俄然膨らんでいく。
ではお蕎麦に手をつけよう。

わかめそば


ますますウドンに見えてきたが、きっと何か了見があるのだろう。
ソバと思えばソバに見えるが、ウドンと思えばウドンに見える。
人間の脳は記憶を改竄させてしまうと聴くが、ワタシの脳はいま記憶の改竄を高速回転で行っているようだ。
ソバの方がウドンより100円高い価格設定だから、このままいけば手打吉兆さんは労せずして100円を搾取できるのかもしれない。

閑話休題。

このウドン、本当に美味いっ。
トロけるような食感なのだが、トロける寸前で腰が顔を見せる。
コンマギリギリのところで腰が効いて麺がトロけない。

「腰がお嫁さんになってるぞ」
「もっと腰をガッ、腰をガッッ」

とは読売巨人軍のミスターベースボールこと長嶋茂雄元監督の言。
打撃指導の際に、腰砕けになったバッターに大いなる示唆を与えたフレーズだ。

だが手打吉兆さんの麺は一味も二味も違う。
まず「トロける」がやってきて、然る後「腰がガッ」とくる。
手打ちグルメの最適二段階右折だ。

この食感はクセになること間違いない。
万人にオススメできる逸品だ。
やるやるとは聞いていたが、まさかここまでやるとは思わなんだ。

手打吉兆、恐るべし。



ソコを見せない、高槻グルメ

大阪府高槻市わけても高槻駅周辺におけるグルメの質は相当に高い。
あくまで暫定的ではあるが、
そろそろそう結論づけねばならないだろう。

黒澤明監督の羅城門という映画があったが、ことの真相は藪の中で終劇となる。
人の記憶ほど当てにならないものはない。
そのことを示唆した名作映画だ。

実のところ読者はすでに術中にハマっている。
羅城門なんて映画はない。
あったのは羅生門という映画だ。

羅城門とは実際に京の都にあった門扉だ。
それを芥川龍之介が逆手にとって「羅生門」という傑作を創り出し、それを巨匠黒澤明が映像化したのだ。
つまり芥川・黒澤コンビは「羅生門」という虚構によって、実際に存在した羅城門の方をフィクション化したのである。
このタイトルの演出からして、
「人間の記憶の改竄」というテーマをめぐる無言の駆け引きが始まっていたのだ。

高槻市駅から京都河原町まで阪急電車で290円。
時間にしてわずか25分だ。

阪急高槻駅の手打吉兆でウドンを食って頭のど真ん中までホンワカしたら、
その足で京の都に出て、羅城門で記憶に喝を入れるのも一興だろう。

大切な何かに気づかなければならない。

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