キダ・タロー/浪花のモーツァルトはいじられキャラ
「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に解明する探偵ナイトスクープ。私が局長の上岡龍太郎です」
この名調子で幕を開ける探偵ナイトスクープが関西ローカルで始まったのが1988年であり、程なくして「浪花のモーツァルト」こと「キダ・タロー」が「探偵ナイトスクープ二代目顧問」に就任した。
今日はそんなキダ・タローについて語ってみよう。
10万曲を世に出した男
キダは番組開始時点で「1000曲」を世に出した作曲家であり「浪花のモーツァルト」の二つ名を頂くのにさほど時間は掛からなかった。
キダ・タローが局長の上岡龍太郎や探偵たちにいじられるのが番組の風物詩となっていた。
「1000曲も同じような曲作って、よう飽きませんねえ」
「うっさいわ。2000曲じゃ」
といった関西的には軽妙洒脱な掛け合いの中で、キダの作曲数は1000曲から2000曲ひいては3000曲と右肩上がりで増加していった。
番組開始当初・探偵ナイトスクープに在籍していた「探偵」は、
嘉門達夫、北野誠、越前屋俵太、槍魔栗三助・・・と現在進行形で書いていて懐かしくなってくる顔ぶれで尚且つ色物揃いであり、上岡龍太郎と色物探偵たちにキダがいじられていた1980年後半のニオイがほのかにたちこめて感慨深い。
・・・そうだ・・・
ツチノコだ。
開始当初の探偵ナイトスクープといえば「ツチノコ」である。
二週に一回は「ツチノコを探して欲しい」といった匿名の依頼が舞い込み、
顧問のキダ・タローが「ほんまにそんな依頼あるんかいな」とつっこんでいたのを思い出した。
確かにやけにツチノコ系の依頼が殺到しており「ツチノコネタはヤラセではないか?それを調査して欲しい」と視聴者がメタ依頼をしてくるのも時間の問題だった。
そのタイミングで先回りしてツッコミを入れてくれるキダは、よき顧問であると同時に視聴者のよき代弁者だった。
キダなくして小室哲也なし
キダの「自称1000曲↗︎↗︎」はまんざらネタとは言い切れない。
コマーシャルソングを中心に関西でキダ・タローの音楽を聞かない日はないといっていい。
関西人として最も馴染みがあるのが「カニ道楽」のテーマソングだろう。
基本的にこのカニ道楽をベースにしてキダの楽曲は構成されており、イントロを微かに聴いただけで「ああまたキダ・タローや」とわかる安心設計となっている。
これは小室哲哉へと継承されていく設計規格となった。
Get Wildをセルフカバーすること40年で更なる高みを目指す小室はキダの正統後継者だといえるのではないか。
カバー曲全盛の悲しい訳
2000年代に入ってカバー曲の比率がとみに高くなった。
この原因は「構造改革による日本の訴訟社会化」にある。
アメリカの年次改革要望書に日本政府が唯々諾々としたがい世の中をアメリカ的に改革した。
弁護士が増加し訴訟社会となり下らないことまで訴訟でカタをつけるアメリカ的な「寒い世の中」になったのだ。
音楽界隈では、
松本零士と槇原敬之の訴訟沙汰がその嚆矢になった。
結果、「ちょっと曲調が似ている」だけで訴訟沙汰になるためオリジナルの楽曲を発表するリスクが高まり、オリジナル曲が減ってカバー曲が増加したのだ。
この「訴訟社会化」は音楽界だけでなく、あらゆる分野において新しいコンテンツを育む力を削ぐため現下のそして恐らくはこれからも日本社会の低迷の一因だといえよう。
しかし2000年代に入ってもキダ・タローはこうしたカバー曲問題とは無縁であり、新曲をひたすらに創造し続けた。
キダの「並の人間にはセルフカバーにしか思えない曲調」が吉と出たのだ。
だから2000年代に入っても順調に新曲を積みましたキダは、「作曲数4000曲」の大台に乗せていてもまったく可笑しくはない。
絶世の美少年?/キダ・タロー
キダがかつて探偵ナイトスクープ内で語っていたのだが、
若い頃は「松田優作」に瓜二つだったらしい。
「女装して張り込みが出来る」ほどの目鼻立ちで「宝塚の玉三郎と言われ近所で評判の美少年だったが、その写真はあいにく空襲で喪失してしまった」と訳の分からないことを語っており真相は藪の中だ。
これこそ、
今だからこそ、
探偵ナイトスクープでメスを入れなければならない謎や疑問ではないだろうか。
キダ・タローと豊川悦司の共通項
キダは関西学院大学のOBだ。
俳優の豊川悦司も関西学院大学のOBであるが両者にはさらに深い部分で共通項がある。
それは関西学院大学中退というグレートゴージャスな学歴である。
どうやら表現者として大成するには関学中退という学歴がプラチナチケットのようであり、私は関学を卒業してしまったことがかえすがえす悔やまれる。
あとほんの少しだけ頑張らなければ中退できたのにと思うとますます悔やまれる。
10万曲への序曲
これまで縷々述べたように浪花のモーツァルトの作曲センス並びに生産量は群を抜いており「自称5000曲」すらも過小申告の線が濃厚だ。
向こうにいったらすぐさま1万曲の大台に乗せることだろう。
さすれば後から駆けつける上岡龍太郎や色物探偵たちとの掛け合いの解像度が鮮明になってくる。
「1万曲も同じような曲作って、よう飽きませんねえ」
「うっさいわ。10万曲じゃ」
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