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杉本和陽/C級2組の天下取り/14のポイント

杉本和陽は日本将棋連盟の棋士。
1991年9月1日生まれの32歳。
竜王戦は4組、順位戦はC級2組。

1991年といえば「羽生の頭脳」が刊行された時期であり、羽生の頭脳をリアルタイムで知らない世代が中堅どころに足を踏み入れていたとは隔世の感しきりだ。

本日は、
昨年2023年度の銀河戦で藤井聡太に大敗した挙句、感想戦でも勝負所で叩きのめされ涙目寸前になっていた杉本和陽五段について語ってみよう。

積読から棋士の素顔を紐解く

将棋書籍だけでも3000冊以上を積んできたワタシにかかれば、棋書をパラっとめくるだけで棋士の内在論理などが透けて見える。

杉本和陽 積読コレクション

だがあいにく杉本和陽五段の著書は2冊とまだ少ない。
世間一般相場でいえば32歳そこらで書籍を上梓できれば一角の人物だが、将棋棋士であれば1冊や2冊は当たり前の世界である。
あの鈴木大介師匠なんぞは30歳の時にすでに人気将棋作家の地位を不動にし、20冊にリーチをかけたほどではなかったか。
杉本和陽五段は現在2冊しか出版していないが、このうち1冊は出色の出来映えである。

「さわやか流疾風三間飛車」

2019年に上梓されたこの作品は「ノーマル三間飛車で居飛車穴熊をぶっ壊す」という普遍の題材構造改革ロマンを扱っており、鈴木大介師匠と根本思想は同じである。
しかしながら、杉本五段は振り飛車好きというより対抗型好きであるため、振り飛車に肩入れしている部分は少ない。
だから「振り飛車大優勢のないスリムな鈴木大介」といったところだろう。

この「さわやか流疾風三間飛車」は構成が非常に白眉である。
居飛車穴熊側のよくある形を3つに絞り、それぞれを深く丁寧に掘り下げている。
またトマホークにも60ページほどの紙幅を割き、これだけでトマホークに自信が持てるようふか〜い暗示をかけてくれる。
また居飛車党が読めば三間飛車の「手の内」がよくわかるため、居飛車党にとっても得るものの多い棋書だ。
実際これは振り飛車党・居飛車党の枠を超え読んでいる御仁が多く、居飛車穴熊と三間飛車の対抗型を指しこなしたいならばもはやこの本は外せない。
それくらいの影響力を持った棋書になっている。



丸山忠久は相振りがヤバい

杉本和陽五段もう一冊の著書である「中飛車戦記」。
これが問題作だ。
共著ということを差し引いてもこれはいただけない。
まず誰がこのパートを書いているのかがわからないのだ。
何をおいても名前を名乗れの原則ができていない。
対談で紙幅をダラダラと潰すぐらいならば、どこを誰が担当しているのかを明記するべきだ。
ひいては棋譜解説書であるのに棋士紹介に行数を費やし、肝心の解説がおざなりになっている。

作者たる杉本和陽が見ている方角は千駄ヶ谷の先輩たちなのだろうか??
見るべき方角はそちらではないと思うのだが・・・
せっかく紙幅に余裕のある棋譜解説書なのだから、しっかりと解説をしてもらいたいものだ。
これでは将棋年鑑の棋譜プラスアルファと五十歩百歩ではないか。
構成も対中飛車のありとあらゆる戦型を詰め込もうとして空中分解してしまっている。
棋譜を並べてわかったのは、
「丸山忠久は相振りもヤバい」ということだけ。
処女作である「さわやか流疾風三間飛車」の出来が良かっただけに極めて遺憾である。




新刊のお知らせ【有料級】

なんだかアマゾンの書籍レビューで文句ばっか垂れてる魑魅魍魎みたいになったが、なんの因果かアマゾンでヤバい情報を見つけた。
なんと杉本和陽五段の3冊目の将棋書籍が刊行されるではないか。

2024/6/24に刊行とのこと。
だがこのシリーズは・・・・・・
すぐ覚えてすぐ勝てたらC級2組におらんやろうに・・・・・・

何はともあれこの3冊目の新刊で杉本和陽の真価が察れるはずだ。



youtubeで棋士の素顔を紐解く


あいにく著書が少なかったため杉本和陽五段の内在論理を丸裸にすることはかなわなかった。
だが、目下IT社会においては動画サイトなどで自己表現に励む棋士も多い。
だからyoutubeなどの動画サイトでも内在論理に肉薄することが出来る。

・・・・・・・
・・・っ・・・
・・・・・・・

ガチガチである。
わずか60秒の新刊紹介動画の中で少なくとも5回は大きく噛んでいる。
目は泳ぎ続け、宙空のなにかに絶えずヘルプを求めている。
よく言えば初々しく、悪く言えば痩身の不審者である。
コミュニケーションに難がありまくる将棋星人に多いパターンだ。

これはヤバい。
杉本和陽五段はやはり将棋ばかりの人だったのか。


棋士中村太地はじめchを乗っ取る

順位戦はA級でありながら竜王戦は5組という異彩の棋士・中村太地八段と鈴木肇さんが主宰するyoutubeチャンネル「棋士中村太地はじめch」。

ワタシは毎日正座して更新されるのをマインドフルネスで待っている。
お陰で視聴する際にはリラックスして太平楽に酒かっくらいながら拝ませてもらっている。
そんな「棋士中村太地はじめch」に3つの異変が起こった。
まず1つ目の異変は中村太地八段が蒸発したこと。
それについてはここでは傍におこう。
次に2つ目が代打でやってきたのが杉本和陽だったこと。
米長門下の弟弟子ということで抜擢されたのだが、これが大当たり。




生真面目
メガネ
早口
将棋ばっか
陰湿
目を合わせない
不審
珍獣
難解語彙で衒学的
友達にはなりたくない



そんなステレオタイプが将棋指しにはあったが・・・



むっちゃ気のいい兄ちゃんやんけ・・・・・・




番組乗っ取ってるし・・・・・・



結論【A級5組】

杉本和陽は日本将棋連盟の棋士。
1991年9月1日生まれの32歳。
竜王戦は4組、順位戦はC級2組。

将棋指しとは思えないほど闊達に様々なジャンルを織り交ぜて伝えようとする姿勢は好感が持てる。
順位戦はC級2組だがあとは強くなれば良いのだからチョロいものだろう。
将棋は強いが何を言っているのかわからない棋士がまだまだ横行するご時世にあって、杉本和陽は貴重な存在である。
だから、
だからこそ勝たなければならない。
いや可及的速やかに勝つだけでいいのだ。

そこで杉本和陽五段にうってつけの新刊書籍を紹介してお別れにしよう。


出版社 マイナビ出版
発売日 2024/6/24
著者  杉本和陽
備考 「予約商品の価格保証」対象商品

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