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阿部寛というライフスタイル

(笑)

2チャンネルで叩かれない男

阿部寛は稀有な人物である。。
というのも、2ちゃんねるで叩かれているのを見たことがないからだ。
2ちゃんねるで叩かれない芸能人なんぞは他にいないのではないか。
しかも、阿部寛は芸能界に飛び込んで40年近くになる。
それだけ活動していれば火のないところにだって煙が立ちそうなものだが、阿部寛の周りには悪い煙がまったくたたない。

便所の落書きと揶揄される2ちゃんねる(現5ちゃんねる)は、何でもありの準治外法権エリアだ。
1990年代末からスタートした2ちゃんねるでは、あること無いこと尾鰭背鰭がつきまくった情報が日夜粗製濫造されていった。
だがその時点では2ちゃんねるに変わるSNSがなかったため、「真相」を求めて2000年代初頭の日本人は2ちゃんねるをこっそりとだが確実に眺めていた。

誹謗中傷、罵詈雑言、そんな中にもときおり真実に近いことがフワッと舞い降りてくる2ちゃんねるは「情報の宝くじ」のようなものだった。
そんな99パーセントがネガティブ情報のサイトでも阿部寛は叩かれなかった。

なぜ2ちゃんねるで阿部寛は叩かれなかったのだろうか?
ここからこの問いかけを念頭に置いて、阿部寛というライフスタイルに迫ってみよう。



仕事を選ばない/仕事が報酬

「仕事が報酬」とはシャーロック・ホームズの名言。
仕事の依頼をもらえること自体が素晴らしいことであり、それがすなわち過去の仕事の報酬だという含みだ。
阿部寛はシャーロック・ホームズと通底するところが強い。

「どんとこい、超常現象@2002年刊行」より

まったく仕事を選んでいるそぶりがない。
むしろ「胡散臭い役柄」を我先にと取りにいっている節すらある。
なかでも、
阿部が大人気ドラマ()・トリックの中で演じた上田次郎は全てが逆ベクトルの世界で秀逸だ。
天才物理学者()、巨根の童貞、唯我独尊、コミュニケーション障害とダメダメ要素が寿司詰めになったような男だ。
ちなみにこの2000年代初頭の天才物理学者()を軸に据えたドラマたるトリックがなければ、2008年の福山雅治主演のガリレオのヒットはなかった。
いやそもそも、ドラマ版ガリレオ自体が誕生しなかったのではないか。
トリックなくしてガリレオなしである。

話を本筋に戻そう。
阿部寛は仕事を選ばない。
なんでも引き受ける。
二枚目であることは間違いないのだが、それを実は最大限に利用しているのが阿部だ。
阿部クラスであれば洗練された役柄を選ぶことはいくらでもできる。
だがそれでは、他者との過当競争に巻き込まれ埋没してしまう。

そこで阿部がとったのが「胡散臭いキャラ戦術」だ。




胡散臭さの阿部

どんと来い、超常現象 P15

こんなにも「胡散臭」が似合う俳優が他にいるだろうか。
「100パーセントの胡散臭さ」との邂逅だ。

間違いなく3分後にはネットワークビジネスに勧誘してくる。

この不純物ゼロの胡散臭さを創り出せるのだから、阿部の演技力たるや末恐ろしい。
しかも日頃は謙虚ですこぶる気の利くことで有名な阿部だから、本人実態とは真逆の人物像である。
だが、だからこそ、
そのことを知っているファンとしては、そのギャップに惹かれたのであろう。

このように仕事を選ばず、胡散臭い仕事であっても全力で引き受ける。
そうした阿部の姿勢が多くのファンからジワジワと支持された。



コツコツとコツコツと

阿部寛の俳優生活は決して順風満帆とは言えない。
トレンディードラマ時代から人気ドラマにちょくちょく出演するものの、主役級にはなかなかありつけない。
地味な脇役をコツコツ、コツコツとこなしてきた。
腐らない、あきらめない、後から来たのに追い抜けれてもふて腐らない。
ただひたすらにコツコツとコツコツと。

ようやく35歳を超えて「ドラマ・トリック」で、2000年にみごと主役の座を勝ち取った。

トリックからのスピンオフ書籍

そしてこれだ。

コツコツコツコツの集大成が最強の自虐作品となって、満を持して世に出された。
初心忘るべからず。
どこまでいってもユーモアとサービス精神を忘れず、自虐ネタでとびっきりの二枚目をひたすらに浪費する。
この姿勢が受けたか、2010年代は阿部寛の時代になったのだ。



ファンを最も大切にする男

ファンを大切にする芸能人は多いが、その中でも阿部は白眉だ。
この阿部寛のオフィシャルホームページがその証左だ。

今時、テキストサイトというのは危惧種を超えた絶滅種だ。
そんな絶滅したはずのテキスト主体サイトが阿部のオフィシャルホームページに見られる。

これは20年以上前に阿部寛のファンのとある女性が立ち上げたサイトであり、そのファンサイトが阿部寛の公認を経ていまに続くオフィシャルサイトとなったのだ。
現実問題として、やはりオフィシャルサイトは今風の演出で派手な方が宣伝効果が高い。
だが宣伝効果よりもファンとの絆を大切にする阿部寛の面目躍如がこのオフィシャルホームページに見られる。

ちなみに筆者が本記事で縷々紹介している「どんと来い、超常現象」もこのホームページの中でしっかり記録されており、なんとも心憎いホームページだ。

本当にファンを大切にする奴ってのは、こうした見えにくいところこそファンを大切にする奴なんだろうねえ。






阿部寛というライフスタイル

コツコツと努力を積み上げ、
少々胡散臭い役柄でも仕事は選ばず、
ファンを見えないところで心から大切にする。

これを併せてコツコツコツコツと積み上げること40年。
2ちゃんねるで叩かれないのは、この40年にわたる真摯さのたゆまぬ積み上げがあるからこそ。
これが人気俳優・阿部寛の原動力だ。

言うは易く、書くは易からず、行うは難し。

筆者も、
阿部寛さんのようにありたいものだ。

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