類体論 ―― 『代数的整数論』(河田敬義)の補足2


今回は5・1・2節(p72)です。

まず、次の命題を考えてみます。(原文ではa,AがそれぞれA,太字のAとなっています。すなわちa→A,A→太字のAです)

   *****

n:正整数

E:1のn乗根の集合

k:標数0の体で、Eの元をすべて含むもの(すなわちE⊂k)

K/k:(有限次とは限らない)ガロア拡大

G:K/kのガロア群。Gはアーベル群で、任意の元σ(∈G)がσ^n=1を満たす

A: K×の部分群で、

① A={a∈K×|a^n∈k×}

さらにa∈A,σ∈Gに対し、写像 χa を

② χa(σ)=a/(σa)

によって定義します。

このとき、χa(στ)=χa(σ)・χa(τ)

   *****


③ χa(σ)^n=a^n/(σa)^n=a^n/σ(a^n)

ここで、①より

a^n∈k×

なので、σ(a^n)=a^n,すなわち

a^n/σ(a^n)=a^n/a^n=1

よってχa(σ)^n=1,すなわち

④ χa(σ)∈E (a∈A,σ∈G)

となります。

χa(στ)=a/(στ)a=a/σa・σa/(στ)a

ここでE⊂k,χτ(a)∈Eであり、またσはkの元を動かさないので、

σa/(στ)a=σ(a/τa)=σ(χτ(a))=χτ(a)

よって

χ(στ)(a)=χσ(a)・χτ(a) (a∈A)

となり、χa(στ)=χa(σ)・χa(τ)が示されました。

   *****


また、すべてのσ∈Gに対してχa(σ)=1となるならば

a/σa=1

すなわち

a=σa (∀σ∈G)

なので、ガロア理論の対応により

a∈k

であることも言えます。

さらにa^n∈k×の条件からa≠0なので、

a∈k×

であることが示されました。


次回も5・1・2節の続きです。

(つづく)


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