チェーホフ作:かもめ

〜あらすじ〜
女優志望のニーナは作家志望のトレープレフと恋仲である。ある日の夕暮れ、ニーナは両親の見張りが厳しい中、彼の舞台へ出演する。舞台には、トレープレフの母親で女優のアルカージナとその愛人、作家のトリゴーリンらが訪れていた。

有名作家に憧れるニーナは舞台での出会いをきっかけにトリゴーリンへ近づき関係を深めていく。一方、トレープレフは舞台の失敗とニーナの心変わりにより、様子がおかしくなり、彼女へ撃ち落とした一羽のかもめを差し出す。しかし、トリゴーリンに夢中のニーナはトレープレフへの冷めた態度を変えることはなかった。

トレープレフはトリゴーリンへ決闘を申し込むが相手にしてもらえず、自殺未遂を決行。みかねたアルカージナはトリゴーリンとモスクワへ発つことを決意。それを知ったニーナはトリゴーリンへの想いを捨てきれず、家を飛び出し女優になることを決意する。

2年後、望みどおり作家となったトレープレフの元へトリゴーリンに捨てられ、死産を経験したニーナが現れる。

◎感想◎
チェーホフ四大戯曲「かもめ」は知名度が高い作品に加え、ニーナの4幕の長台詞が有名だ。トレープレフへ放つ長台詞には、絶望から立ち直るヒントが散りばめられており、最後に彼女は彼の元を去り1人で旅立つことを選ぶ。
このシーンは勇気ある決断であり、何度読んでも胸を打たれる。

登場人物達は1〜3幕と進むにつれて、追い詰められゆき、葛藤も強くなってゆく。台詞は日常生活の会話がほとんどだが、徐々に滑稽さと恐怖が増していき、笑ってしまうところも多数ある。4幕では登場人物達が収まるとこに収まるといった印象があるなか、トレープレフだけが自殺してしまう。若い男性が作品の中で自殺してしまうなんて、悲劇ではないか!!!!
しかし、チェーホフはこの作品を喜劇としている。なぜか不明だが、主人公ニーナが生まれたときからの宿命を背負い信仰心を持って生きる選択をしたからだろうか...

そう考えると、それぞれの家庭環境が登場人物達にどんな影響を与えて、最終的にどう折り合いをつけて人生を歩んでいくのか、この戯曲は全体を通して表現しているのではないか。

1896年に初演を迎えた「かもめ」は、今なお多くの劇場で上演され、チェーホフの魂が受け継がれている。
日常生活の中で、人はなぜ苦しみ、自殺まで追い込まれてしまうのか、また絶望に陥ったとき自らを救い出すためにはどうしたらよいか、戯曲を通して我々に問いかけているように感じた。

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