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川越は自信満々に勧めたい、誇れるふるさと

日本を代表するスリーピースロックバンド「ACIDMAN」。2002年(平成14年)にアルバム「創」でデビュー以来、静寂と躍動が両立するサウンドの立体感、生や死、宇宙といった深遠なテーマにもとづく世界観に多くの人が魅了され、根強いファンが多い。

ACIDMANのフロントマンを務める大木伸夫さんは、川越市出身だ。現在は東京に居を構えるが、2、3ヶ月に一度は川越の実家へ足を運ぶという。「川越は住んでいる時も大好きな町だったが、離れてみるとその素晴らしさが何倍もわかるようになった」と大木さんは振り返る。

「川越まつり」の中心地である喜多町で生まれ育っただけあって、川越という地域への思い入れも人一倍強い。子どもの頃から川越まつりがそばにあった大木さんに、祭りのエピソードや大木さん流の楽しみ方、川越の町が持つ魅力などを伺った。

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生まれた土地に価値を感じられるという誇らしさ

大木さん:都内から実家に向かう時には駅から蔵造り通りの方向へ向かうのですが、裏道を通らずにわざわざ混んでいる道を選びます。蔵が立ち並ぶ周りの景色を楽しみながら帰れるから。

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僕が幼い頃から蔵造りの町並みや菓子屋横丁はすでに健在でしたが、一番街の通りは電柱があり、行政もいまほど観光客に向けてアピールしていませんでした。ですから、僕が子どもの頃にとっての川越といえば「歴史の深いところなんだな」、くらいの認識でした。

しかし、学生時代に電柱が埋まり一気に観光地化した頃から、食べ歩きができる場所が増えたりして、どんどん町としての魅力が増していったように思います。ここ数年、僕の友人たちに川越のことを尋ねると、「行ったことある!」と答える人が多くなってきたんです。「おしゃれなところだよね、若い子がよく行ってるよね」と。「いま川越に来てるよ」と連絡をもらったりすることも増えました。それくらい、川越がほかの地域の人から見ても魅力を感じてもらえているんですね。

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僕はなんといっても、川越の景色が好きです。古き良き蔵造りの町並みが並ぶ一番街に入った瞬間の、まるで京都に来たかのような感覚。本当に昔からあった町並みもあれば、以前はなかった人力車が走ったり、「川越プリン」のような新しい食べ物ができていたりするのもすごく好き。芋を薄く切ったおせんべいを若い子たちが食べているのを見るとグッときますね。

同時に、昔からあった料亭がいまも続いているのがうれしい。「川越 幸すし」 は、帰省した時に家族と行くお店です。中庭の岩や池の風情が素敵なんですよね。

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菓子屋横丁の「玉力製菓」は、同級生の実家です。あの通りは子どもの頃からしょっちゅう友だちの家に遊びにいった、僕の原風景のひとつ。時の鐘近くの「大玉や」のおせんべいは僕のソウルフードだし、川越初雁球場近くの「小峰商店」には「太麺焼きそば」をよく食べに行ってたなぁ・・。

蔵造りの町並みを見るたびに、郷愁感、今の残すべき日本の良さ、古い町並みの歴史の深さを感じる。「こんな価値のあるところに生まれたんだ」と、とても誇らしい気持ちになります。

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今でも思い出す祭りの喧騒、クジのロマン

川越まつりは、毎年家族で山車を見に行きました。幼い頃は町内揃いの法被を着て黄色いたすきをかけて、山車を曳かせてもらっていました。4歳上の兄が経験するのを見ていたこともあり、「でっかいもの(山車)を曳くんだな」、そう思ったことを覚えています。

ほかには、父が祭りの終わり頃に浴衣を着て提灯を持って練り歩いていたり、最後のわーっという突き合わせの声、曳っかわせの音も記憶にありますね。そうだ! 山車が方向転換する時の、木が軋む音も、いま思い出した! 山車の下に「てこ棒」を入れて回すとカコカコって鳴る。すごく印象的な音です。

僕が子どもの頃から印象深いのは蓮馨寺のお化け屋敷! すごくクオリティが高いんですよ。実はいまも懐かしさに時々入ったりするのですが、確実にグレードが上がっています。前は人形だったのが、いまはゴリラの仮面をかぶった人間が追いかけてきたりとか。

蓮馨寺の出店の中にはクジを引く店が多いのですが、とにかく当たらなくて、だいぶ大枚をはたきました・・。どうしてもヌンチャクがほしくて数千円使ってしまった僕をみかねて、母が店主に買い上げ交渉までしてくれたのですが、どうしても売れないと交渉決裂。クジはロマンであり、奥深さを学べた場…。正直クジは大好きで、いまでもやってしまいます(笑)。

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祭りがつなげてくれたふるさとの友だち

やがて思春期を迎え大人になるにつれて、照れもあり川越まつりへの積極的な参加からは離れていきましたが、ミュージシャンになってからも必ず毎年川越まつりには来ています。

実家の駐車場にアウトドア用のテーブルと椅子を出して、つまみとお酒を買って祭りの雰囲気を楽しみます。あとはなんといっても出店めぐり!

数年前には、中学時代の同級生たちと一緒に飲みました。祭りが終わったタイミングで「大木、いま何してる?」と久々に連絡をくれたんです。それから4、5人が家に来てくれて。

祭りで町を練り歩いていたら、よく図書館で顔を合わせていた別の中学の同級生とばったり会ったこともあります。僕がミュージシャンだと知らなかったようで、「ACIDMANってお前だったのかよ!」と盛り上がりました(笑)。それ以来、祭りの日には毎年一緒に飲む仲になっています。

僕は頻繁に川越の実家に帰りますが、大抵は家族と会うだけで終わってしまうし、積極的にこちらから友人に連絡を取るタイプでもありません。だからなおさら、川越まつりをきっかけに中学時代の友だちが連絡をくれたり、地元で会えたりするようになったことがすごくうれしかった。

僕は山車を曳かなくなったけれど、年に一度ふるさとに集まって、出店を回ったりクジを引いたりするのが本当に楽しくて仕方ないんです。川越まつりの華やいだ空気感の中、出店の食べ物を買い込んで一緒にお酒を飲んだりするというだけで、祭りとして十分最高ですよね。

それなのに、さらに各町内が誇るでっかい山車があって、それを眺められるなんて! 山車をバーっと皆が曳く様子、お囃子と山車の圧巻なぶつかり合いが見られるのも、本当に贅沢。

僕が好きな、川越まつりの時間帯は夕暮れ時。ほんのり湿った、湿度の高い風が吹いてくる頃。ちょっと肌寒くなりかけた中に佇んでいると、遠くに山車を曳く掛け声やお囃子、歓声が聞こえてくる・・。

いろんな方にこの素晴らしい体験をしてほしい。僕の好きな川越を、そして川越まつりの魅力を、これからも伝えていきたいと思っています。

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