【自然環境部会コラム】自然を訪ねて(18)オオタカの営巣顛末記
川越市の南部には武蔵野の面影を残す雑木林が広がっていて、「(仮称) 川越市森林公園」計画地に指定されている40haほどの平地林があります。ここはオオタカの営巣がけっこうあって、これまで何度も散策する人々を感動させてきました。今年も3月ごろからオオタカの鳴きかわす声が聞かれ、営巣が期待されました。どうやら樹林地南の散策路脇の大きなアカマツの樹上10mぐらいのところに、営巣を始め産卵したらしいのが4月下旬ごろ、ヒナがって顔を出し始めたのが5月末でした。このころになると連日カメラマンが押し寄せ、ギャラリーは大にぎわいでした。
5月30日11時ごろ行くと猛類特有のの白いが顔を出して羽ばたく姿が確認できました。3羽確認できたのは、6月5日です。巣の縁に立ち上がってこちらを見ていました。お腹が空いたのでしょうか、ピヨピヨと合唱が聞こえてきます。時にはこちらにお尻を向けてピイと白いものを飛ばします。きれい好きなのでしょう、親鳥の教育がよいのでしょうか。
異変が感じられるようになったのはいつごろからか、親鳥が巣に餌を持ってくる間隔が長くなってきたのです。時には、メスの親鳥が巣から飛び出していく姿を確認することもありました。また、カラスに追いかけられたリ、追いかけたりするシーンに出会いました。
写真を撮りに来ている人の話では、抱卵期に巣の近くで50羽近いカラスとバトルしていたこともあったそうな。6月14日、ついに悲劇が起こりました。500mほど離れた民有地の林でオスの親鳥の死骸が発見されました。不思議なのは、頭がなく内蔵もなくなっていて、羽だけが数m離れたところに散らばっていたことです。
その後、餌はメスの親鳥がそれまでは、主に10時前後と3時前後運んでいましたが、メスの親鳥だけになって不規則になりました。現地に行くといつも雛の鳴き声がしていました。6月16日など巣の脇10mほどの枯れ木のテッペンで羽を広げ威嚇するような親鳥に出会いました。羽を乾かしているとのことですが、雛たちを守っているようにも見えました。
そして、巣立ちがあと1週間ぐらいに迫った6月22日のことです。4羽の“母子家族”に異変が起きたのです。誰もが思ってもみなかった事態でした。朝9時ごろ現地に行くと3羽の子供たちの姿が消えていたのです。静まりかえった巣には呆然と立ち竦む母親鳥の姿だけがありました。さらに夕方4時ごろ行ってみると、巣の脇の枝に母親がしょんぼりしていました。ほどなく飛んでゆきましたが、その後会うことはありませんでした。
(宮澤宏次・稗島英憲)
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