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死刑囚と繋がりのある人々を訪ねて④土屋和也氏最高裁弁護人(3/14付で解任)

2月の東京滞在時、土屋さんとの面会後のこと。

私は上告審(最高裁)の弁護人に、本件について取材協力を得たく連絡をとっていたが、数回のアプローチの末、その弁護人が土屋さんの存在すら覚えていないという事態があったことは前回のブログで書いた通り。

私は沖縄の自宅戻ってきてから、上告審弁護人から得られる情報は殆どないとは思いつつも、弁護人に電話した際に伝えた通り、事件番号と罪名を記載した簡易的な手紙を送り、再び返答を待つことにした。

上告審代理人弁護士へ

先生

お世話になっております。先日はお休みの日にも関わらず、電話でのご対応、ありがとうございました。

早速ですが、先生が土屋和也さんにお付きの事件で、ご依頼頂きました事件番号を下記の通りお伝えします。

平成○年(○)第○号

住居侵入、強盗殺人未遂、強盗殺人、窃盗被告事件

以上、控訴審判決書より。

ご確認頂き、是非、お話をお聞かせ頂きたく存じます。

返信を心よりお待ちしております。

度々の連絡、大変失礼致しました。

(黒塗りは私の連絡先電話番号) 河内千鶴

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3月1日上告審弁護人から着信あり

私の手紙をみて、ようやく連絡をくれたようだった。先日電話したことを覚えてくれていたのだろう。

この電話では、弁護人から再度、土屋さんの事件について尋ねられた。

弁護人)えっと、っとっと、、、どこの裁判所だったっけ?

私)高裁は東京高裁です。

弁護人)で、名前は誰だったっけ?

私)土屋和也です

弁護人)え?

私)(声を張って)土屋和也です

弁護人)ツチヤカズヤ?

私)はい。

弁護人)カズヤはどういう字?

私)平和の和に、也。

弁護人)ツチヤカズヤ・・・罪名はなんだったっけ?

私)罪名は、住居侵入、強盗殺人、、、

弁護人)はいはいはい。わかりました、月曜日にちょっとコピー取ってきます。それでまたご連絡します。

弁護人は要点を聞くだけ聞いて、早々に電話を切りたいようだった。

私は間を置かずに訊いた。

私)先生が最高裁お付きなんですよね?

弁護人)それはまだ頼まれていないし、決まっていない。

私)国選で決まってたんではなかったですか?

弁護人)え?

私)国選の代理人ではなかったですか?

弁護人)国選の選任受けてないよ。はい

私)土屋さん本人から、堀内先生のお名前を聞いて連絡をしたんですけど。

弁護人)それも調べときますけど、私は国選を受けていないと思ってるけど

私)先生は土屋さんの代理人じゃないってことですか?

弁護人)現在のところ、そうですが。

私)まだお受けになっていないってこと・・・?

弁護人)はい

おかしいと思った。国選弁護人の通知は受け取っているはずだ。あまりの平然とした態度に、私の認識違いだろうかと思わされるほどだ。

弁護人は、

「はいはいはいはい。とにかく、月曜日に記録は謄写しておきますので」

と言い残し、電話を切った。

電話中、会話の節々で、弁護人の背後から若い女性の声が聞こえた。会話のサポートに入っているようだった。

弁護人は耳につくほど間に間に「あの〜」「えーっと」等を口癖のように言う。会話の速度もかなり遅い方だ。次の言葉が浮かばない様子も度々伺えた。こちらの話し方が速いのか、短い言葉でも何度も聞き返してくる。声のトーンから、年を召していることはハッキリと判った。私は電話の後、土屋さんが弁護人の体調を気にしていた理由を察したのだった。

3月6日上告審弁護人から再び着信あり

同じ日の午後、上告審弁護人の担当事務員からメールが入った。

タイトルは「判決文」。メールを開くと、控訴審判決文が添付されていた。前回の電話で話していた通り、判決文の記録謄写をしてきたようだ。メールは簡素な一文が添えられているだけだった。

再び電話をしてきたのは、その受け渡し確認だったのだろう。

私は電話に出て、挨拶を済ませた。その後すぐ弁護人は言った。

「この件については、私は怪我して自宅療養中で法廷にいけないので、裁判所に弁護人辞任届を提出しようと思ってます」

すでに述べた通り、受任から1年以上経っている。なぜ今のタイミングで辞任なのか。もし私がその理由を問い詰めたとしても、理解不能な返答が返ってくることはわかっていた。弁護人は国選が決まった後の土屋さんとの面会時、「厳しい結果になる」という旨を土屋さん本人に伝えている。その後は事件にとりかかることもなく、「上告棄却」という言葉通りの「厳しい結果」をただ待つだけの有り様だ。土屋さんの情報など、ほとんど何も知らないと言っても過言ではない。私は理由を特に聞かず、協力のお礼を伝えるのみに留めた。電話は1分ほどで終わった。

電話を切ろうとした時、弁護人の背後から、次は若い男性の声が聞こえた。

「結構あっさり終わったんだね」

どうやら、私の会話をずっと誰かが、しかも複数人が聞いていたようだった。

約10日後、土屋さんから手紙が来た。その手紙の最後に、上告審代理人が辞任したという旨が記載されていた。

ひとりごと

どれほど体調を崩していたのか知らないが、どこまで身動きできなかったのかさえ知る由もないが、本当に私が連絡をするまで、自身が土屋さんの事件に国選弁護人として付いていることを知らなかったのだろうか。

土屋さんの高裁判決が下されたのは確か2018年の2月14日。そこから1年以上の時が経っている。辞任届は裁判所に提出するだけで済むはずだ。なのになぜ、これまで放っておいたのだろうか。

本当に忘れていただけなのだろうか。もしくは残酷にも、上告が棄却されるのを待っていたのだろうか。

いずれにせよ、弁護人はこの残虐さを自覚したうえで、自らの行為に対して猛省していることを願う。

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