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超短編小説「続・肥えサンマ」


音子の思い出し笑いは、近隣の病院でも評判になっていた。
そして、笑顔の似合う看護師ベスト10にも選ばれ、週刊誌の表紙を飾るようにもなっていた。

「音子ちゃん!週間音波をみたよ。看護師をしながら雑誌の撮影もこなして大変だね」
居酒屋のマスターは、忙しすぎる音子の健康を気遣った。
「マスター!実はね。ウチの病院はね。皮茶病院と経営統合することになったの。それで来年から皮茶村に転勤だわ。でも、実家に帰ったら、必ず遊びに来るね」
さらに音子は、雑誌のモデルはやめて看護師に専念するとマスターに伝えた。

年が明けると、音子の皮茶村での生活がはじまった。
皮茶村は水素乾電池の生産で世界一となり、人口が飛躍的に増大していた。
人口増に伴い村唯一の皮茶病院も、みるみるうちに拡大して多国籍化した。
日本語でしかコミュニケーションが取れない音子だったが、外国人とも難なく笑顔で接していた。
皮茶村では、AI皮茶パパが宇宙から持ち込んだ水素乾電池に欠かせない鉱物のカバードフィルムの他に、非可聴音を送受信できるブレスレットも持ち込んでいた。
音子は勤務初日から非可聴音ブレスレットを身につけて外国人の患者とコミュニケーションを取っていた。

空気のない宇宙では、空気を振るわせて音でコミュニケーションする人間とは違い音波の概念がない。
したがって、映像のみによってコミュニケーションが構築される。
つまり、映像の共有で意志を確認する。
人間のように音波で意思疎通をはかるとどうしても誤解が生じる。
なぜなら心の中まで音波では確認できないからだ。
しかし、宇宙では映像の共有なので意思疎通は明確で誤解はない。
心の中まで映像化されるので心の底から理解できるからだ。

非可聴音ブレスレットを身につけて音子は、なんの問題もなくスムーズに患者さんとコミュニケーション取った。
そして、音子の笑顔は皮茶病院でも評判となった。
もちろん、皮茶パパの肥えサンマの知ったかぶりは、患者さんたちも情報共有していた!!ギャー

おわり

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