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超短編小説『皮茶パパストリート』



20年前の皮茶パパストリートは、皮茶パパの一人芝居を観るために全国各地から観光バスに乗ってやってくる人たちで賑わった。
一人芝居する皮茶パパの運営するライブハウスも昼・夜の2回公演が1年あとまですべて予約で埋まるぐらい人気化していた。
そこで、この商店街は皮茶パパストリートと呼ばれるようになった。
しかしながら、皮茶パパは20年間一度も一人芝居の内容を変えなかったために、観客に飽きられ、ストリートも衰退していった。
皮茶パパがそれに気づいたときには、時すでにおそし、商店街のほとんどがシャッターを下ろしていた。
皮茶パパも、いろいろ考えを巡らせていたが、人々の価値観が大きく変わり時代の流れにもついていけず、おもしろい芝居を見せられずにいた。
城スキー書店を営む商店街会長の城スキー店長だけがシャッターを下ろさずにがんばっていた。
ネット通販におされて一般書物の売り上げは大きく減少していたが、小中高校に卸す教科書の売り上げでなんとか食い繋いでいた。
皮茶パパも芝居の予約がない日は城スキー店長に頼み込み, 城スキー書店でアルバイトさせてもらっていた。
ある日、いつものように城スキー店長が出かけると皮茶パパはあとをつけてみた。
すると、城スキー店長は日雇い派遣の仕事に汗を流していた。
「そうか自分が無理にアルバイトを頼んだから、店長が日雇いの仕事をしていたのか。」
城スキー店長は、ストリートを今まで盛り上げてくれた皮茶パパに恩義を感じて、雇ってくれていた。
「このままじゃダメだ!なんとかしよう」
皮茶パパは奮い立った。
「そうだ!高2の夏に祖母の実家の温泉旅館に行ったときのこと。遭遇したUFOに伝えられたことをイメージしてみよう」
いきなり早速即、書店の宇宙図鑑を手にして、惑星どうしを同期化する方法をイメージしてみた。
なるほど。技術的にはあと数百世紀で可能になるが、今はその発想を具現化する必要がある。

UFOがどうやってタイムスリップかというと、例えば江戸時代の1600年に行きたいのなら、1600光年の光がまだ到着していない惑星と同期する。
同期した惑星で1600光年の光が来るのを待ち、来た瞬間に1600年の江戸時代にタイムスリップする。

城スキー店長は城好きで有名だ!
420光年かかるE惑星と同期して待つ。
光が届いたら江戸城にナビをロッグオンしてワープ。
皮茶「どうですか? モノホンの当時の江戸城は?」
店長「うーん、思ったより大きいですね!しかも鮮明」
皮茶「まわりに大きな建物がなく、空気も澄んでいますからね」

雲の中に飛行体を隠しながら、恐る恐る江戸城の上空を旋回した。
帰還して皮茶パパは語りはじめた。
「店長、さっきみたいな旅をうちのライブハウスでやろうと思います。
1人芝居はやめて旅行業に業態変更します。」
いきなり早速即、皮茶パパは微笑みながら
「そうすれば、昔のように街が賑わい、シャッターを開ける店も増えると思います」
店長「そうか、ありがとう皮茶パパ! 今までがんばってきた甲斐があるよ」
城スキー店長は涙ぐみながら皮茶パパをハグした。ギャー‼️

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