オープンカー
会社を辞めた時に、オープンカーを買った。
これから始まる新しい人生の花向けに、普通だったらしない”なにか”をしようと思ったのだ。まず考えたのは長期の旅行。しかしフリーランスになってすぐに長期休暇を取れるほど余裕はないぞと自分を戒める。でも長く会社勤めをやめ、自由の身になったんだから、ひとつぐらい思い切ったことをしてみたい。そこで思いついたのがオープンカーを買うことだった。
友人の作家・浅生鴨さんが乗っていたMINIのコンバーチブルがずっと気になっていた。中古のMINIを専門に扱うディーラーに何度か見に行った。そこで出会ったのが、今の愛車だ。深いブルーに黒い幌のMINI COOPER。中古車とはいえ、それなりにいい値段だ。
そもそも結婚以来、車はレンタカーだった。東京は便利な街で、電車やバスでどこにでも行ける。都心であれば駐車場も高い。だから30年ぐらいに前、東京に出てくる時に車を売って以来、ずっとレンタカー。それに、うちの家族は、妻ひとり、子ども3人。合理的に考えたら、人も荷物も乗らないオープンカーなんてありえない。
しかし人生をギアチェンジをするのだから、まだ見ぬ荒野を走ってくれる車を買ったってバチは当たらないだろうと、自分に言い聞かせて、買った。
乗り始めて、まもなく2年。
合理的ではないその選択は、思いがけず、ぼくの日常を変えた。
どうなったのか。
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