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へその緒と、アベンジャーズ。

 ウソみたいな本当の話なんですが、家が火事になりました。誰かの役にたてば、と火事の6日後から書き続けています。

 あの日からまもなく4週間になろうとしています。今日は消防士さんのことを書きます。お世話になったのは東京消防庁の杉並消防署のみなさん、まさに「心優しきアベンジャーズ」でした。

 出火したのは朝8時頃、僕はすでに外出していました。連絡をうけて家に戻ったのが8時半すぎだったと思います。それから日が暮れるまでの間、消防士さんと一緒にいました。

 消火活動って、燃えさかる日の中に飛び込んでいくわけですから、まさに命がけ、屈強であることは間違いないのですが、ありがたかったのは、細やかな心配りなんですよね。

家財を守るビニールシート

 我が家の火事、出火したのは2階でした。なので1階はほぼ燃えておらず無傷でした。しかし消火のための大量の水を放水するため1階は水浸しになっていました。ここで驚いたのは、1Fの主要な場所に水濡れを防ぐビニールシートが、書斎の机と寝室のベッドにかけてあったことです。2階も、3階も、焼け焦げてしまっていているのですが、そのビニールシートの下には、「昨日までの暮らし」がちゃんと守られていました。燃えさかる火と、命がけで戦いながら、少しでも多くのものを守ろうとしてくれた消防士さんの行動、すごくありがたかったです。

救い出した家族の思い出。

 炎と戦いながら、心優しきアベンジャーズは、家族のかけがえのない思い出も救い出してくれました。子どもたち3人分のへその緒です。3階の箪笥の中の小引き出しに仕舞ってありました。消火活動が終わってから3階に上がった時には、箪笥は跡形もありませんでした。ということは3階へと火が駆け上がっていく最中に、箪笥を発見し、そこから救出したんだと思います。箪笥を見つけたら、小引き出しだけでも救い出す、なぜならそこには大切なモノが仕舞ってあるから、ということを彼らは経験的に知っているのかのしれません。おかげで、子どもたちがこの世に生を受けた証でもある想い出の品は、綺麗な桐箱に入ったまま無傷で家族の手元に残されたのです。

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現場に近づこうとしない子どもたち

 消防では出火原因を特定するために当事者全員の事情聴取が不可欠です。あの日、家にいた子どもたちにも、事細かに事情を聴取する必要がありました。しかもこの事情聴取は間違いがないように火災のあった現場、つまり燃えた家で、しかも当日に行われます。でも大きな炎を目の当たりにした娘たちは家に近寄ろうとはしませんでした。それを伝えたところ、では消防署に場所を改めて、といってくれました。朝からずっと消火活動をしていて疲れているだろうに、嫌な顔ひとつせずに、そうしてくれました。また消防署での子どもたちへの聞き取りも、慎重に言葉を選んで、聞き取りをしてくれました。

 命がけの現場にのぞむ消防士さん、彼らは日々厳しい鍛錬を重ねています。その中で、何が大切なのかを、常に問い続けているのだと思います。だからこそどんな時も、どんな状況でも、動じることなく、正しい人であれるのだと思います。

 心優しき、最強のアベンジャーズたちは、今日も地球のあちこちで誰かを困難から救っていることでしょう。いつもありがとう、そしてお疲れさまです。僕たち家族は、あなたたちのおかげで今日も健やかに過ごせています。


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