見出し画像

始まりは、小さな火だった。

 火事になって家が焼けてしまいました。幸いなことに家族は全員怪我もなく無事でした。1ヶ月がすぎ、ようやくご近所へご挨拶にうかがうことができました。隣家の方々で在宅されていた方のお話を聞くと、僕も知らなかったような事実を改めて知りました。

 驚いたのは、火のまわりの早さ。

 火事があった直後のことです。隣家の方が、なにかパチパチ音がすると思い、窓から僕の家を覗き見たんだそうです。すると僕の家の窓の向こうに、小さな火が見えたんだそうです。あ、これは危ないと思って水をかけようと思い、ホースを取りに行って戻ってきたら、僕の家のリビングはすでに火の海になっていたといいます。そのあとも、あれよあれよと燃え広がり、2階のガラスがバンバン音を立てて割れて行ったんだそうです。子どもたちからも同じような話を聞きました。最初は小さな火だった。でも消防署に連絡をしているわずかな間に、火はみるみる大きくなっていき、あっという間に、命の危機を感じるような、とんでもない炎になったんだそうです。乾燥している冬、火のスピードは想像以上に早いといいます。ピアノの下に畳んで置いてあった、娘が卒業式に着るはずだった袴に火がつき、それが近くの棚に移り、さらにそ壁紙を燃やし、どんどんと燃え広がっていったんだと思います。

 消防車到着までは10分程度。その時は手がつけられないくらい燃えていた。

  消防車の到着はすごく早かったです。通報から10分たらず。でもその時にはもう手をつけられない状態になっていたそうです。消防の方たちは、2階の玄関から突入して消火を行ないました。それと同じくして、両隣の家に延焼しないよう、それらの家に上がり込み、我が家に向かって放水をしていたと聞きました。おかげで延焼はほぼありませんでした。それでもお隣の屋根を少し焦がしたり、網戸を焦がしたりしていました。

 消火活動がひと段落し、僕が家の中に入ることができたのは、出火からおよそ7時間が過ぎた15時頃。中に入った時は、正直、ここまでか、と思いました。2階のリビングルーム、そして3階の子供部屋、そのほぼすべては焼き尽くされていました。

 出火原因はわからないまま。

 一番気になるのは、なぜ火事になったのか、です。これは結局「不明」のままです。出火した場所は玄関を入ってすぐの場所、ピアノの前のあたりです。ここにはコンセントがあり、電動自転車の充電器と電気ストーブがありました。コンセントに埃がついてショートすることがあるといいますが、ショート痕はありませんでした。つまり発火元はコンセントではありません。電気ストーブは当時、スイッチが入っていませんでした。しかし消防の方によれば、まれにコンセントにささっていれば電源がオフの状態でも出火することがあるんだそうです。電動自転車の充電器のケーブルの中ほどにはショート痕が残っていました。ここから出火した可能性があります。ただ電気ストーブが発火し、それでケーブルが燃えてショートした、という可能性もあります。結局は堂々巡りになり、出荷原因は不明ということになりました。

 始まりは、本当に小さな火でした。それが10分ほどで命の危険を感じるような巨大な炎になるのです。あなたが想像するよりもずっと早いスピードで燃え広がっていきます。

 これが火事の怖さなのです。

あなたからのサポート、すごくありがたいです。