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「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組を作っていなければ、NHKをやめていなかっただろう。

 ぼくは、ずっと”それなり”のディレクターだった。

 ネタを探したり、取材をしたり、それになりにできたし、ロケも、構成も、編集も、それなりだった。でも人をアッと言わせるようなスクープをとれる訳でもなく、インタビューがずば抜けてうまいわけでもなかった。

 2005年、「クローズアップ現代」という番組をつくる制作班にいた。そこには、綺羅星のようなスターディレクターが何人もいた。そんな先輩たちに憧れ、ずっともがいていた。

 ある日、あるプロデューサーから声をかけられた。

「『プロジェクトX』の後に続くレギュラー番組を一緒につくらないか?」

 大ヒット番組「プロジェクトX」は、過去のプロジェクトをドラマチックに描く群像ドキュメンタリーだった。その後継番組として企画された「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、ひとりのプロを徹底的に描くドキュメンタリーだ。

 そのプロデューサーは、いわゆるヒットメーカーだった。その人と仕事をしたいと思い、シリーズの立ち上げに参加した。

 ディレクターとして初回放送となる「信じる心が人を動かす リゾート再生請負人 星野佳路」を制作、シリーズのMCや音楽、テロップなど、番組全体のトーンを、プロデューサーと一緒に作り上げて行った。それから数年にわたる「プロフェッショナル」漬けの毎日が始まった。

 その業界の誰しもが認める、第一人者を取材する。

 そんなモットーの下で、ディレクターとして、そしてデスクとして、たくさんのプロフェッショナルと出会い、その流儀を間近で浴びつづけた。

 やがて、彼らに共通する、あることに気づいた。

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