地方を元気にする極意とは

1.そもそも地方創生とは

2.なぜこうなってしまったか

3.ケース1:コンパクトシティ

4.ケース2:魅力の再発見、初発信


1.そもそも地方創生とは

 今、日本の都市圏を除く地域で急激に人口減少と経済の縮小が進んでいる。2010年の国勢調査をもとに日本創成会議が発表した報告によると、なんと2040年までに896の市町村が消滅する恐れがあるとされている。これは2040年時点で、これらの市町村の20~39歳の女性人口が半減し、出生率が低下することで人口が1万人を下回り、経済が成り立たなくなることを意味している。全国には約1800の市町村があるので、日本の約半数の市町村がこの状態に陥る可能性があるということだ。これを受け、2014年に第二次安倍内閣が主要な政策として「地方創生」を取り上げた。これにより、地方創生というワードは広く知られるようになった。

2.なぜこうなってしまったか

首都圏の人口推移

 まずはこの表から紹介したい。この表は首都圏の人口推移を示したグラフである。将来予測としては人口が減少傾向に向かうことが示されているが、2020年以前までは首都圏の人口は増加傾向にあった。ただ、日本全体の人口推移としては2010年ごろをピークに減少傾向に向かっていたはず。どうしてこのような一見するとあべこべな統計データになっているのか。
 それは首都圏に人口が集中しているからである。

首都圏流入

 これは東京圏に転入してきた人口を年齢別で表している。15~29歳で東京圏に移り住む人が全体のほとんどを占めていることがわかる。大学進学や就職を機に地元を離れてくる人が多数いるということだ。つまり地方の立場から見ると、少子高齢化によりもともとの地域人口が減っているところに拍車をかけるようにして、若年層の流出がおきていることになる。これが、地方創生が今大きな課題として取り上げられている理由である。

3.ケース1:コンパクトシティ

 ここからは実際の事例を挙げたい。青森市で行われたコンパクトシティ化の先進例である。コンパクトシティとは、人口減少を「食い止める」のではなく「備えて受け入れる」という考えに基づき、地域の都市機能を集約するというものだ。
 2001年、青森市は約185億円を投じて市の地域復興を目指し、地下1階・地上9階の複合型商業施設「アウガ」をオープンした。当時新聞各紙は、アウガを全国各地で進む中心市街地衰退への対策の成功事例として取り上げた。しかし経営はすぐに行き詰まる。初年度の売上高は約23億円と目標の半分以下。オープン時から赤字決算となった。その後、市は何度も再生計画見直しを進めたが経営状態は一向に改善せず、2015年度決算で約24億円の債務超過となり、事実上の経営破綻に陥った。市は2017年2月末、1~4階の商業フロアを閉鎖した。そして2018年1月、アウガには市の窓口機能が移転し、「駅前庁舎」として業務を開始した。
 この例はそもそも考えの方向から間違っていたと言える。いくら都市部にあるような巨大な施設を作っても、今残っている人たちは昔からの地域性に魅力を感じているのであまり利用しようという気にはならない。さらにアウガのように新しくできた巨大施設はテナント料が高くなり、地元商店や中小企業は借りることができず、結局大型チェーン店が出店することになる。結果として地元の経済は全く改善されず、むしろ計画前よりも悪くなってしまう。
 地方創生は都市の真似をすればよいのではなく、その地域の昔からの特性をどう活かしていくのかに目を向けるべきだということがわかる典型的な例である。

4.ケース2:魅力の再発見、初発信

 北海道厚真町は先に挙げた日本創生会議によって消滅可能性ありと判断された自治体だった。当時の町人口は約4700人。観光や特産物など目玉もなく、人口増加の対策に苦しんでいた。そこで新千歳空港から35分というアクセスの良さを活かし、「東京圏からの日帰りも可能」をコンセプトに分譲地を600区画整備・販売したところ、「北海道のなかでも比較的温和な気候であること」「自然が豊かであること」をアピールした甲斐もあり、約500区画の販売を達成した。2014年度には子育て支援住宅を周辺自治体より2割ほど安い家賃5万6千円で売り出したところ、15戸に62人の入居が実現した。すべて20代から40代の現役世代だった。
 厚真町が成功した理由は、地元の人があまり気付いていなかった魅力を、東京から日帰りで行けることをきっかけに発信できたことにある。移り住んだ人によると、「豊かな自然の中でこそできる体験がとてもよかった。」という意見が多い。地元の人にとっては当たり前のものが実は外部の人にとっては新鮮だったということだ。
 

 観光業で町おこしできる自治体は限られている。半ば無理やり作ったような観光産業では、持続的な経済発展には繋がらないだろう。地方創生を成功させるには、地域の特色を活用しながらその魅力を外部に発信し、外からの人をその地域に定着させなければならない。
 その魅力に地元の人が気付きにくいというジレンマはあるが、だからこそ地域の魅力を「再発見」をする機会を創出できるサービスがあれば日本の地方創生はもっと進み、活性化されると思う。