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古着や売れ残り品から新しい素材を生む「グリーンアップサイクル®」プロジェクト

世界的に深刻な問題となっている衣料廃棄物を、独自設計の製造技術を使って価値あるモノに再活用する「グリーンアップサイクル®」プロジェクト。“燃やさない・埋めない”という選択で新たな価値を生み出すこのプロジェクトに取り組むシナジーメディア株式会社の佐藤正一さんに、グリーンアップサイクル®の成り立ちから、再生繊維シートやパネル(グリーンアップサイクル®シート・パネル)の活用法、利用価値について話を聞きました。

シナジーメディア株式会社 代表取締役社長 佐藤正一さん

賛同してくれる人たちとグリーンアップサイクル®の取り組みで新しい価値を!

——グリーンアップサイクル®プロジェクトをスタートさせた経緯を教えてください。

アパレル産業は、国連貿易開発会議が環境汚染産業の2位に繊維・アパレルを挙げるくらい地球環境に大きな影響を与えている産業と言われています(※1)。染色による汚染や水の大量消費、ほぼ海外からの輸入に頼るCO2排出の問題とあわせて、ファストファッションに象徴される大量に生産された衣料が、最終的には根本的な解決策もなく大量処分(燃やす、埋める)されているのが問題になっています。

一部、 着なくなった古着などを回収して海外の人に着てもらおうという活動もありますが、うまくマッチングしないと第二国、第三国へとその古着は流れ、リサイクルやリユースといった掛け声のもとに結局は廃棄物を海外へ押し付けることになるんですね。その結果、アフリカのガーナや南米のチリなどで、古着がゴミとして山積みになっているような状況も報道等で見聞きします(※2)。そういった概況に対して少しでも改善・貢献できるように、衣料廃棄物を新素材にアップサイクルして再利用するグリーンアップサイクル®プロジェクトをスタートさせました。

提供される素材や、作りたい製品によって色や厚さを変えられる繊維シートやパネル

——具体的にはどのようにして繊維シートや繊維パネルが作られるのでしょうか?

回収した古着や、製造工程で出た端材・残布などを仕分けし、自動車の内装材などを製造している工場の設備を利用して、繊維シートや繊維パネルにアップサイクルしています。

具体的な作業は、集められた衣料廃棄物からボタンやファスナーなどを外す前さばきをし、反毛したものにエアレイド製法という方法で融着繊維を混ぜ、絡み合ったフェルトを作ります。そのフェルトシートにローラーで熱を当てると、シートやパネルが出来上がります。シートのサイズは、約90㎝×180㎝の36版で、厚みは0.5㎜の薄いものから20㎜のものまで、製品化する商品によって違う厚さの製品をご提供しています。

特長は、皮革や羽毛以外の現在の衣料の主流である混合素材の大部分が、グリーンアップサイクル®のシートやパネルに出来ることです。さらに、接着剤で固めることはしないので、ホルムアルデヒドの発生や、経年劣化でボロボロに崩れてしまったり、強い衝撃を与えると割れてしまうということもなく、再度、解繊して反毛すれば、同じ製法で半永久的にグリーンアップサイクル®のシートやパネルに出来ます。

衣服に使われていた布(左)を掻いて細かくし(中)、特別な製法でフェルト化(右)するのがグリーンアップサイクル®の主な工程
コーヒーの麻袋を使ってリサイクルしたハンガー

——シートにするにあたり、苦労した点はありますか?

皮革や羽毛以外は基本的にリサイクルできるのですが、ジャージ素材など、素材によっては何度も掻かないと解繊できない大変さがあります。和紙作りと一緒で、僕たち素人が一生懸命に紙をすいてもダマになってしまい、綺麗な和紙が作れませんよね。それと同じで、混ざり具合によっては繊維がぺちゃんこになったり、融着繊維とうまく絡まなかったりすることも。布の組み合わせや割合などの調整も大変ですし、仕上がりの色も黒ではなくてグレーということでしたら、それに合った繊維の組み合わせを投入前の仕分けで行う必要があります。

——耐水性はいかがでしょうか?

洋服と一緒で、水分がたまるとポタポタと水滴が下に落ちます。そういった意味ではプランターに最適ですね。鉢カバータイプのものに石と土を入れて植物を育てることもできるので、このプロジェクトで作ったプランターが街中や公園にズラッと並ぶといいなぁなんてことを夢見ています。

あとは、小学校で子どもたちがプラスティックの鉢を使ってアサガオを育てると思うのですが、その鉢にこの素材を使ったプランターを使ってもらえればな、と。リサイクルに興味を持つことで子どもたちの意識も変わると思うので、学校でもぜひ活用していただきたいです。

ちなみに先日発表になったのですが、百貨店やスーパーマーケットなどを運営するエイチ・ツー・オー リテイリング様が、兵庫県川西市と地域内資源循環を通じた地域活性化の実現を目的にした包括連携協定を結ぶにあたり、衣の分野でグリーンアップサイクル®プロジェクトを採用してくださることになりました(※3)。

——それは嬉しいニュースですね! もっと様々な場所で使っていただきたいという想いがあると思いますが、どういった商品があるのでしょうか?

オリジナル商品は、マルシェバッグやポーチ、ボタントレイ、コースター、ブックカバー等です。

ブックカバーは日販(日本出版販売株式会社)様が行っている「ONE ECO PROJECT」のひとつとして出版社の協力のもと制作したもので、全国の書店で購入できます(※4)。

株式会社アシックス様には、スニーカー「GEL-LYTE III OG」シリーズの「RECYCLE FELT」に、余ったTシャツを活用したグリーンアップサイクル®のオリジナルフェルト素材を提供しました。

私たちが「こんなものはどうですか?」と提供するだけでは限りがありますので、企業や団体、デザイナーの方々など多くの人に「こんな使い方どう?」と自由な発想で利用していただいたり、提案していただけるとありがたいと思っています。

実際に地元のオーガニックレストランでは、我々がプランターとして作った製品を、お店に来られるお客様の荷物入れとして利用していただいていていて、その発想に驚きました。

繊維シートや繊維パネルがアイデア次第で様々な製品に変身

——アパレル以外での活用も良いですね。

はい。例えばですが、土嚢袋として使うのはどうだろう? というようなアイデアも出ています。土木や建築の現場などはもちろん、河川敷や山道などで使っていただけるといいなぁと思いますね。

アパレル産業が原因で起きる衣料廃棄物の問題を、アパレル産業内だけで解決するには限界があります。なので、私たちはそこにとらわれてないで、色々な方と一緒に知恵を出し合いながら、このプロジェクトを広げていけるといいなと思っています。

そして、エイチ・ツー・オー リテイリングさんと川西市が始められる取り組みのように、地域の方々が着ていた愛着ある衣類をグリーンアップサイクル®で別のものに変えて、もう一度地域の方々に戻して使っていただく、そういった循環の仕組みができるといいですね。

「色々な方と一緒に知恵を出し合いながら、このプロジェクトを広げていきたい」と話す佐藤さん

※1 環境省「ファッション産業が環境に与える影響
※2 NHK NEWS WEB「着られなくなった衣服の“末路“とは・・・
※3 エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社「川西市との『包括連携協定』締結について
※4 日本出版販売株式会社「ONE ECO PROJECT」プロダクト第二弾


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書いた人・佐藤季子
編集プロダクションを経て、音楽誌や演劇誌などエンタメ系の雑誌でライターとして活動。地元・川崎市では、麻生区の地域情報サイトロコっち新百合ヶ丘、小中学生で結成された麻生区SDGs推進隊(一般社団法人サステナブルマップ )の運営メンバーとして活動中。