なにもないなら、まず「面」を売れ

とにかく始まった「新潟県阿賀町 高校魅力化プロジェクト」。
いろんな考えや縁がつながってそこに加入することになった私。

実際町で始まったのは5月頃。
私が参加したのは7月末ぐらい。

参加した最初、現地には学習環境=公営塾という場所は出来ておらず、ビジョンもミッションもコンセプトもなかった。現場がなかったので2ヶ月ぐらいは役場に席を置いて、一緒にやることになった一人の仲間と休憩室(冷蔵庫とホワイトボードがあるだけの部屋)に篭って、自分たちは何をすべきか?どんな支援が必要なのか?何を大切にしていきたいか?などを話し合って、言語化していた。

この場所に来るまでは2人とも、都会で仕事をしていたので仕事も夜遅くまでなんて当たり前(好きでやってるのでブラックではない)だったし、仕事終わりに行く場所っていったら居酒屋になる生活をしていたけれど、この2ヶ月は朝9時ぐらいに出勤して冷蔵庫部屋に篭って、昼飯をなんとなく食べて、特に身体を動かすことなく頭だけ動かして、5時前に終わって、明るいうちに2人で町の温泉に行って、露天風呂につかりながら「あ〜、これって仕事してるんやろか、、、」って言って笑い合っていたことをハッキリと覚えているw

(コンセプトどうする〜)

やったこともない、仕事をする予定の環境ない、何をやるかもハッキリ決まっていない、広報が打てない、チラシもつくれない、そもそもこの仕事のやり方を教えてくれる人がいない、そんな環境下で自分たちの頭で想像しながらなんだかんだ考えてこの時期=これから地域や高校や生徒の皆さんに全く知られていない段階、にやっておくべきことで一番重要なのは自分たちの「面」を売ることだ!と考えた。

田舎という環境に飛び込んでいった際にハマる落とし穴のひとつに
「自分はどこどこでこういうことをやってきた、ドヤっ!!」
というキャラ固定。

もちろんそれは実績だし、自身の強みだし価値でもある。
けれど、それは人として信用されてから発揮されるものだ、ということをこの仕事をしている最中も、仕事を終えた今でも強く思う。

「この場所で、自分はまだ何者でもない」
そう意識して、信用を獲得しようとした。

では、信用されるにはどうしたらいいのか?
それはまず自分を知ってもらうことだと考えた。
知ってもらうためにとにかく現場=高校に足を運んで「面」を売ること。
関係性構築のためには「接触回数」が大切、質よりもまずは量、自分から積極的に、且つ丁寧に関わっていくことで、その想いや行動は相手から返ってくるはずだ。(返報性)

ということで、8月の1ヶ月間はとにかく学校へ足を運んだ。
まだ教員の皆さんは懐疑的だったし、そもそも挨拶したことない人も多数。
誰かが地鳴らししてくれてる、なんてことはないないない。

何をしたか?それはもう泥臭いほどの営業。

授業と授業の間の5分休憩の時間になる前に学校へ行き、許可を得て、廊下を歩き、目があった生徒さんに「こんにちは」と言って、チャイムがなると同時に学校を出る。

放課後になったら、再度学校へ行き、許可を得て、廊下を歩き、部活に行く生徒さんにすれ違いざま「おつかれさま」と言って、学校を出る。

そんなことを毎日続けていた。
今思うと、1日の中の仕事という仕事をしていた総合計時間は2時間ぐらいだったかもw

そんな地味営業、最初はさすがに「あいつ誰?」「また来てる」といった怪しい空気を漂わせていたけれど、量は裏切らないんですね。徐々に「あ、こんにちは」「どこから来たんですか?」「何してるんですか?」と生徒の皆さんに話しかけられるようになってきた。まだ5分休憩に廊下を歩いていたので、そんな長話は出来なかったけれど、少しずつ「面」が売れてきた、そう実感したタイミングだった。自分たちに興味を持ってくれる生徒さんも数人いた。

この地味営業が功を奏したのかはわからないが、たしか8月の後半に管理職の先生から「一度、生徒たちに進路相談してみませんか?」と言われた。自分たちの都会での仕事経験や就職経験、そして大学進学経験がこの町ではなかなか聞けないことだということだったが、この粘り強い営業を通して自分たちの本気度や人間性が伝わったからこそのお誘いだったのかもしれない。

もちろん2つ返事で「はい!」と答え、当日は営業中挨拶したことがある10名ちょっとの生徒さんが来てくれて、1時間ほどお話させてもらった。みんな色々話してくれたし、笑ってくれたし、自分たちに興味を持ってくれた。ほんとこの地味営業のおかげだった。

これは後々の話になるけれど、その時に話した生徒さんが、結局2年間公営塾に通ってくれて3年後の今でも連絡をとったり、インターンで公営塾を手伝ってくれている。それを考えると、この時の進路相談がなかったらどうなっていたことやら。。。

そんな「面」を売る1ヶ月が過ぎ、いよいよ公営塾オープン日である9月1日が来た。

つづく

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