私が韓国で出会った、〈出会う確率たぶん10%〉の垢すり士

たしか20世紀最後の年、2000年の事だった。

私は韓国・ソウルのとあるホテルで働いている友人を訪ねて、ソウルに行った。そのホテルに着いて、友人はまず〈ッテミリ(垢すり)〉を勧めてくれた。

〈垢すりかあ…初体験、やってみるかな〉

私は〈垢すり士〉らしきおじさんに、〈チャルプータットゥリムニダ(よろしくお願い申し上げます)〉と挨拶して、いわゆる垢すり台に背を天井に向けてゆっくり寝転んだ。

〈シャッ!〉

勢いのいい音が私の皮膚上を駆け抜けた。と同時に、私の皮膚にピリピリと痛みが出てきた。

(い、いた・・・)

心の中ではこう言っていたのだが、この垢すり士さんは自分が一級のテクニシャンだと思い込んでいる様子だった。

(い、いたた・・・え?)

私は友人の紹介だったもんだから、〈痛いですやめてください〉とは断れなかった。

そんな私の心の中の声をよそに、垢すり士さんの垢すりはどんどん興に乗っていく。そのうち何かの歌の鼻歌まで始まった。垢すり士さんは、
〈일본에서 관광한다면 어디가 좋아?(日本で観光するとしたら、どこがいいの?)〉
と訊いてきた。私は、
〈え?あ、ああ・・・오사카,교토,와카야마,이들을 취천해요.(大阪、京都、和歌山あたりいいですよ)〉
というと、
〈ワッカーヤマ?〉
と返すので、和歌山はまだ知らない様だった。

そのうち、垢すり士さんは何か私に訊くごとに
〈シャッ〉と私の皮膚上をスキーのように勢いよく駆け抜けた。

・・・こういった一種地獄的な垢すり初体験が終わって、
友人が
〈オッテッソーヨ?キブニチョッチヨ?(どうでした?気分いいでしょ?)〉
と爽やか一直線に言うので、
〈え、ええ・・・〉
と私は苦笑いで返した。

そのあと、友人と外に出て、真冬のソウルの街を歩いたが
友人がアパートの鍵を職場に忘れてきたことが判明した。ところがなんでか、職場にはつながらず
〈鍵業者〉に約1時間後に来てもらって、鍵をほぼ破壊してようやく中に入った。
その日は、テレビで今は懐かしの〈順風産婦人科〉をやっていた。
デビュー当時?のソン・ヘギョもテレビに登場した。

さて・・・鍵業者を外で友人と待っている間、私はなんでか寒くて仕方がなかった。真冬だから、いやそれ以外のわけがあることは、何となくわかった。

あとから思い返すと・・・垢すりは施術後皮膚に必ず〈オイル〉を塗ることになっていたらしいのだが、あの垢すり士はオイルを塗り忘れていたのだ。

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